北朝鮮のウラン濃縮により核兵器開発の動きに対し、アメリカ議会では今回の中間選挙で下院で多数党となった共和党の有力議員がオバマ政権を非難しています。日本ビジネスプレスの私の連載「国際激流と日本」からの引用です。
「オバマ政権の、北朝鮮に対して手を差し伸べる政策は明白に失敗した。今後、米国は北朝鮮が核兵器計画を拡大して継続することを防ぐために、これまでより断固とした姿勢を見せなければならない」
声明を発表したロスレーティネン氏が共和党議員である点は重要だ。なぜなら、下院では今月上旬の中間選挙で共和党が大勝利を飾って多数党となり、外交委員会をはじめとする各委員会の運営も、今後、共和党の手にわたるからだ。同議員はすでに事実上の下院外交委員長なのである。
効力がなかったオバマ政権の「戦略的忍耐」
ロスレーティネン議員は以下の2つの要求をオバマ政権に対してぶつけた。
「米国政府は北朝鮮を『テロ支援国家』として再指定すべきである。2年前に北朝鮮のプルトニウム生産停止への報酬のつもりで米国政府がその指定を解除したことは重大な誤りだった。今、その誤りを正す時が来た」
「米国は、中国に対して、北朝鮮にもっと圧力をかけ、非核化を実行させるよう強く働きかけるべきである。北朝鮮の中国への依存度を考えれば、中国は北朝鮮に対して巨大な影響力を保持しており、北朝鮮にウラン濃縮を停止させることも可能なはずだ」
こうしたロスレーティネン議員のオバマ政権への非難まじりの要請は、来年は連邦議会の下院で確実に多数派となる共和党の、オバマ政権への正面からの圧力となるのである。
今までオバマ政権は北朝鮮の核問題に対して「戦略的忍耐」策を取ると言明してきた。北朝鮮の非核化のためには、じっくりと時間をかけて、忍耐強く相手の動向を見ながら目標達成を目指すというアプローチだった。ソフトで柔軟な政策だと言えよう。
だが、今回の北朝鮮のウラン濃縮の事実上の発表は、この「戦略的忍耐」が無効だったことを示してしまった。北朝鮮のウラン濃縮というのは以前から米国にとっては鬼門だった。北朝鮮はウランに関して米国を手玉に取ってきたとも言える。
2009年冒頭まで6カ国協議の米国首席代表を務めたクリストファー・ヒル氏は、私が先月、インタビューした際、次のように語っていた。
「北朝鮮は6カ国協議の交渉中にはウランの存在をまったく否定していた。ところが最近になってウランの軍事使用を認めるようになった。交渉中はウソをついていたわけだ。(つづく)
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
6774 オバマ政権は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定せよ 古森義久

コメント