沖縄県知事選は現職の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏が再選を果たした。厳しい言い方をすれば、対抗馬の伊波洋一前宜野湾市長が勝っても政局に与える影響は少ない。菅首相は近く沖縄を訪問して日米合意に基づく辺野古移設案の実現を訴えるつもりだが実現は困難であろう。普天間米軍基地の固定化が続く。
極東アジアの情勢は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件、北朝鮮の延坪島砲撃など緊迫度を増している。米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を中心とした空母機動部隊が中国の喉口ともいえる黄海で米韓合同軍事演習を開始した。
緊迫した国際情勢の変化の中で日米軍事同盟の必要性が高まっている。日本にとって在日米軍の抑止力がいっそう重要度を増した。本来なら「ジョージ・ワシントン」の黄海派遣で、沖縄県民は戦争に巻き込まれると赤旗が林立し、反米・戦争反対の県民デモが米軍基地を囲んで連日起こっていたであろう。
だが選挙の争点は沖縄にだけ米軍基地の負担を負わせるのではなく、本土にも負担を負わせる「県外移設」の要求であった。投票率は戦後二度目の低さであった。日米安保条約に反対した伊波氏だったが、三万八千票以上の大差で敗北している。
暴走する北朝鮮を前にして急遽動いた中国は、十二月上旬に北京で六か国協議の首席代表による緊急会合の提案をした。だが米国も韓国も応じる気配をみせない。菅内閣は米韓両国と歩調を合わせる構えである。
終始、言ってきたが、「ジョージ・ワシントン」の黄海派遣は北朝鮮に対する恫喝というよりも、中国に対する牽制である。米韓合同軍事演習は中国が主張する排他的経済水域(EEZ)の中で行われた可能性が高い。米空母機動部隊にはイージス艦などが随伴し、空からは電子機器を搭載した偵察機が監視行動を行っている。中国の北海艦隊司令部のある山東省青島の海軍基地が丸裸にされようとしている。
その圧力によって中国が本腰を入れて北朝鮮の暴走を抑えさせるというのが米国の真の狙いであろう。また日米韓は六か国協議の開催では、これまでの繰り返しで、あまり意味がないと思っている。この情勢下、中国は北朝鮮・金正日総書記の側近である崔泰福書記を30日から公式に招へいすることになった。六か国協議の首席代表による緊急会合に北朝鮮から積極的に賛意を示すことを促すとみられる。
これは北朝鮮による砲撃を再開させない効果があるかもしれない。すくなくとも十二月初旬までは北朝鮮が砲撃を行わないことを約束すれば、中国は日米韓に六か国協議の首席代表による緊急会合に応じるようさらに迫ってくるのであろう。
杜父魚文庫
6777 緊迫した国際情勢の変化と沖縄県知事選 古沢襄

コメント