毎週火曜日と金曜日の閣議がある日には、政府の「公式見解」を示す政府答弁書が決定されます。本日もけっこうな本数の答弁書が閣議決定されたのですが、その中で「おいおい、これが政府見解か?」と思わず嘆息したくなるものがあったので紹介します。
それは、自民党の森まさこ参院議員の質問主意書に答えたもので、質問内容は以下の通りでした。
《国会における閣僚の答弁は、国会の権能と国政における重要性に鑑みて、高度の政治的・道義的責任のもとになされるべきものである。閣僚が国会において虚偽の答弁を行った場合、この閣僚はどのような政治的・道義的責任が生じると考えられるか》
この質問自体、普通であれば必要のないはずのものです。閣僚が国会答弁で嘘をつくようでは、国会審議はそもそも成り立たないというか、質疑を行う意味がなくなってしまいますから。ところが、今国会では仙谷由人官房長官をはじめ、閣僚からその場しのぎの嘘が何度も飛び出て、謝罪やら訂正やらが繰り返されたので、こんな質問主意書となったのでしょうね。
で、この質問に対する政府の答えには呆れてしまいました。《お尋ねについては、答弁の内容いかんによるものであると考える》
…これは、なんでしょうね。つまり、答弁内容次第では、嘘をついても政治的・道義的責任は生じないと言いたいようです。政府が公式見解として、国会答弁における嘘を許容してみせたわけです。はぁ。
私はこの答弁書を読んで頭がクラクラしました。そして、仙谷氏の東大の同期である自民党の谷垣禎一総裁が11月19日に大阪市で行った講演を思い出したのでした。谷垣氏はこう話しました。
「学生のころ、革命家を気取るような同級生もたくさんいて、大部分の左翼は『国家権力と戦っているんだから、嘘をつくことも仕方がない』と考えていた」
国家権力と戦っていた側が、国家権力を行使する側に回って、なお嘘をつくことを肯定すると。仙谷氏は、8月に谷垣氏に電話してきた際には「オレもいつまでも左翼じゃないよ」と言っていたそうですが、あーあ。道理の通らない嫌な世の中になってしまったものですねえ。菅直人首相はこの半年の政権運営について、「我ながらよくやった」なんて寝言を述べていますし…。
杜父魚文庫
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