北朝鮮が静まりかえっている。暴走を戒める中国の説得が効を奏したのであろうか。そんな甘いことではあるまい。厳寒を迎えた北朝鮮は深刻な石油不足で手も足も出ないところに追い詰められているとみるのが正しい。相次ぐ米韓、日米合同軍事演習で危機感を持った北朝鮮軍が慌ただしい動きをみせたのは米偵察衛星で捕捉されている。韓国政府筋は三八度線に北朝鮮軍の新鋭戦車約100両が移動し、これまでの戦車が後備に退がった動きをリークしている。
戦前の日本に「石油の一滴は血の一滴」という標語があった。戦中には木炭車というガソリンを使わないバスが現れた。第二次世界大戦で日本とドイツが連合国に敗れたのは、石油が枯渇したことに原因が求められる。今の北朝鮮も同じであろう。戦車を大量に配置換えするには燃料の大量消費が必要である。
北朝鮮軍の最大の弱点は、戦闘機や戦車を動かす石油の備蓄が払底していることにある。以前から指摘されていることだが、北朝鮮空軍のパイロットの技量は、航空自衛隊のそれに較べて著しく劣る。航空燃料を節約するために訓練飛行が制限されているためだ。
少し前のことだが、日経ビジネスに興味深い記事が出ていた。北朝鮮は中国から年間50万トンの石油の援助を受けているが、厳寒を迎えて底を尽きかけているという。
北朝鮮軍は、年間どのくらいの量の石油を使用できるのか・・・成田空港で1年間に使用するジェット燃料の量は380万トン。日本の自衛隊が、1年間に使用する石油は150万トンである。また、日本の都道府県で石油消費量の最も少ない自治体でも200万トン弱。
だが北朝鮮軍が使える石油は年間30万トン程度にすぎないという。有事になれば平時の30万トンが一気に跳ね上がる。北朝鮮の石油備蓄は100万トン程度。日本の石油備蓄は日本石油連盟のサイトによると、国家備蓄が91日分(4,833万キロリットル)、民間備蓄が79日分(4,184万キロリットル)で、合計170日分(9,017万キロリットル)。あまりにも規模が小さい。
北朝鮮にとっては「石油の一滴は、まさに血の一滴」なのである。意地の悪い見方をすれば、米国は北朝鮮の石油事情という足元をみて、黄海や日本海で大規模軍事演習を仕掛けているという事が言える。静まりかえっている北朝鮮は三度目の核実験というカードを切るタイミングを測っているのではないか。瀬戸際外交もカネがかかる。
杜父魚文庫
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