ワシントンではオバマ大統領への逆風がますます激しくなりました。とくに外交面でのオバマ非難は勢いを増しています。与党の民主党側からもオバマ大統領が外交面で成果をあげていないことへの批判が出ています。
確かにオバマ大統領は就任以来、2年近く、北朝鮮でも、中国でも、イランでも、さらには中東でも、具体的な成果はなにもあげていません。むしろ逆に以前より悪い状態をつくりだしたとさえいえます。
そうしたオバマ外交への批判はさらに議会下院での共和党の進出により、拡大されそうです。下院の多数を共和党が握ることで、下院全体のオバマ政権への姿勢がずっとネガティブとなるからです。
とくに下院の外交委員会ではこれまですでにオバマ外交を多方面から批判してきた共和党保守派の女性議員が委員長となります。委員長の権限は強大です。外交委員会全体、場合によっては下院全体を思うように動かせる場合も少なくないのです。
この共和党女性議員と同議員に続く共和党議員たちがこれからの新議会の外交委員会で果たす役割を報告する記事を書きました。
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〔ワシントン=古森義久〕米国議会下院の外交委員会の委員長に北朝鮮や中国への強固な姿勢で知られる共和党ロスレイティネン議員が就任することが決まり、来年1月からの新議会ではオバマ外交への批判が明確に表明されることが確実となった。
(ロスレイティネン議員)
対日政策を審議する同外交委の東アジア関連の小委員会も貿易問題で米国産業の擁護を説く共和党議員が委員長となる。
同下院では11月の中間選挙で共和党が多数を占めたことで全委員会のトップが与党の民主党から共和党に替わることになった。
外交委員会ではこれまで共和党の筆頭委員だったイリアナ・ロスレイティネン議員(フロリダ州)が委員長になることが決定した。
同議員はキューバ生まれで、共産主義のカストロ政権への反対が強く、北朝鮮や中国の人権弾圧にも遠慮のない非難を表明してきた。
委員長就任が決まった今月上旬の声明でも「無法国家や独裁国家の責任を追及し、同盟諸国との連携を強める」ことを強調し、とくに北朝鮮の韓国砲撃などを糾弾して制裁の強化を訴えた。
同議員は北朝鮮の砲撃の際にオバマ政権の政策を批判する形で「テロ支援国家への北朝鮮の再指定」をも提案した。日本の拉致問題にも一貫して協力の姿勢を明確にしてきた。
ロスレイティネン議員は長年、下院外交委員会で活動し、同様の発言をしてきたが、これまでの民主党多数下では委員会全体の意向とならなかった。
だが共和党多数となると、法案や決議案の提出、公聴会の主題や証人の選択、行政府の予算への決定権などすべて主導権を発揮できるため、同議員らの批判的意見はオバマ外交に対しても議会全体の対応としてぶつけられることになる。
同外交委員会の東アジア・太平洋・地球環境小委員会はこれまで民主党のサモア選出の投票権のないエニ・ファレヲマベガ代議員が小委員長で、外交委員会全体と同様に与党のオバマ政権の政策を批判することはなかった。
だが来年の第112議会ではこの小委員長ポストも共和党のドナルド・マンズラ議員(イリノイ州)が継ぐことが確実となった。
(マンズラ議員)
マンズラ議員は工業地帯を選挙区とするためもあって中国や日本との貿易関係では米国産業界の権利の擁護を主張してきた。
その一方、中国の人権弾圧は頻繁に非難し、オバマ政権の対応を軟弱だとして述べてきた。同議員は安全保障では全体に共産主義国に厳しく同盟国との連帯の強化を説き、オバマ政権の対日安保政策に対しても批判をためらわない。
同外交委員会の共和党側にはそのほかエド・ロイス(カリフォルニア州)、デーナ・ローラバッカー(同)、クリス・スミス(ニュージャージー州)各議員ら中国の通貨・貿易政策や人権抑圧、軍拡、ハッカー攻撃などを一貫して非難してきたメンバーもおり、これら議員の声も一段と大きくなることが予想される
杜父魚文庫
6886 アメリカ新議会はオバマ外交を酷評する 古森義久

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