中国海軍の艦艇一〇隻が南西諸島の公海を西太平洋に向かって現れたと写真入りで報じられていた。中国脅威論が叫ばれたが、私は別のことを考えていた。大陸国家である中国はもともと陸軍主体の戦力強化に努めてきた。海軍が沿岸海軍から外洋海軍を目指して強化されてはいるが、近代化されている日本の海上自衛隊に比較すれば、保有艦船数、航海時間や訓練の練度でまだ差がある。
ほんの10年くらい前までは、中国海軍は外洋に出ると船酔いする水兵が続出して、海上自衛隊では見下す風潮があった。それが、ようやく縦列で艦隊を組むところまできた、という程度の印象でしかない。
米国海軍に次ぐ実力を有している海上自衛隊は、いぜんとしてアジアで最強の海軍なのである。米第七艦隊の幹部は中国海軍を評して大部分が時代遅れの旧式海軍と歯牙にもかけていない。数年後には中国初の航空母艦が就航するであろうが、それを以って中国海軍が飛躍的に近代化、強化されると思うのはどうであろうか。
中国の軍事力の主体はあくまでも厖大な陸軍兵力と400発といわれる核兵器にある。中国海軍の強化は中東からのシーレーンの確保に主眼があるといわれている。日本のような海洋国家は、海上通航路であるシーレーンの安全確保が国防政策の最重要課題なのだが、大陸国家である中国も経済の発展に伴って石油消費国としてシーレーンの確保が緊急課題となったのは事実である。
具体的にいえばマラッカ海峡を米海軍に押さえられれば、中東からの石油が中国に入ってこない。そこでミャンマーに石油を上げて、中国・重慶を結ぶパイプラインの建設計画まで検討課題になっている。中国海軍の外洋艦隊化とミャンマー・重慶パイプラインは同じ戦略目標に立つとみていいだろう。
これだけなら米国も日本も中国海軍の強化をそれほど怖れる必要はない。日本は米海軍と協力してマラッカ海峡の安全を保ち、さらには南支那海と東支那海の海上通航路を確保すれば済む話である。
古森義久氏のワシントン・レポートによれば「中国海軍が航空母艦を配備する」という展望は、このところ米国と日本両方の安全保障の関係者たちの間で懸念をもって語られてきたという。
つい近年まで小規模の沿岸パトロール艦艇グループにすぎなかった中国海軍が、あっというまに遠洋海軍へと拡大し、「パワープロジェクション」(遠隔地への戦力の投入)の代表とされる航空母艦までを保有するというのは、シーレーン確保の海軍政策とは異なる。その点で懸念が生じているということであろう。
12月中旬に米国防総省のシンクタンク「国家戦略研究所(INSS)」が中国海軍の作戦についての報告を発表した。この報告で、中国共産党首脳が南シナ海の領有権防衛などに航空母艦が必要だと見なし、すでにその配備を決めているという情報が明らかにされた。このことは日本領土である南西諸島の領有権にも当てはまる。
中国海軍の現状は米第七艦隊の幹部がいうように、大部分が時代遅れの旧式海軍の域を出ない。中国海軍の実力はウイキペデイアによれば、次のようなものである。
<<兵力約26万人、うち海軍航空部隊約35,000人、沿岸警備隊約26,000人、陸戦隊(海兵隊)約1万人を有する。近代化を進めてはいるが、旧式装備の数の方が多い。
駆逐艦26隻、フリゲート49隻、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦3隻(夏型を1隻と晋型を2隻)、攻撃型原子力潜水艦の漢型を3隻(稼働1隻のみ。商級を2隻、通常動力型潜水艦56隻(うち26隻は旧式化し退役の近いロメオ級、明型、)。また、海軍航空隊は、7個海航師(海軍航空師団)、7個独立飛行団から成り、各種軍用機620機を保有する。>>(ウイキ)
主要艦隊は①北海艦隊②東海艦隊③南海艦隊の3つ。青島基地に司令部を置く北海艦隊は黄海、渤海湾方面を担当して、 旅順基地、烟台基地、威海基地がある。
寧波基地に司令部を置く東海艦隊は東シナ海方面を担当して上海基地、舟山基地、福州基地がある。さらに湛江基地に司令部がある南海艦隊は南シナ海方面を担当して広州基地、海南省楡林基地がある。
専守防衛を国是とする日本には、中国本土を攻撃する意図は持たない。しかし中国が尖閣諸島など日本領土に野心を持てば、自衛隊の総力をあげて阻止するであろう。
政府は17日の閣議で、防衛力整備の指針となる新たな「防衛計画の大綱」と、今後5年間の防衛費の総額などを定める中期防=中期防衛力整備計画を決定した。新大綱は北朝鮮や中国の動向を踏まえ、警戒・監視能力を高め、機動的に部隊を派遣する「動的防衛力」を掲げ、島しょ部の防衛態勢の強化などを打ち出している。また海上自衛隊については新たに6隻の潜水艦と2隻のイージス艦を増やすことになった。
潜水艦を22隻態勢にすることは、南西諸島の防衛拠点を7ポイントに増やすことになり、中国海軍にとって嫌な存在になるのは明らかである。
中国海軍ははソ連から4隻の629型潜水艦(ゴルフ級)の供与を受け、さらにその設計図を提供され、改造を加えた上で1966年に1隻就役させている。だがソ連から供与された1隻は沈没事故を起こし、残る3隻の去就は不明。これがソ連から中国に対して提供された最後の潜水艦技術であるといわれている。
また中国の原子力潜水艦の開発は1950年代後期より開始され、1974年から091型原子力潜水艦が建造されている。しかし隠密行動を必要とする潜水艦にとって騒音が激しい点で問題があった。その後、静粛性の改良が進んだといわれているが、米海軍や海上自衛隊の潜水艦技術には追いつけないでいるのが現状であろう。日本近海に出没する中国の潜水艦の動向はほとんどが掌握されているという。
日本は原子力潜水艦こそ持っていないが、高性能の潜水艦を所有し、米第七艦隊の潜水艦群と連携しているので、中国海軍にとって脅威であり続けるであろう。また有事には潜水艦の強敵となるイージス艦を海上自衛隊は6隻保有している。日米軍事同盟が機能するかぎり海上自衛隊の優位性は変わらないといえる。
杜父魚文庫
6924 中国海軍は大部分が時代遅れの旧式艦艇 古沢襄

コメント
今回の防衛大綱は耐用年数延長がなされる潜水艦の数を除けば、軍縮財政大綱と読みました。日本の政権が決断できないうちに、5年後にはもう追いつけないほどの差ができるのではないでしょうか。中国が尖閣諸島を狙う理由は漁業資源以外に3つあるといわれているかと思います。1つは海底資源、2つ目は台湾と沖縄の併合、3つ目は戦略核兵器の発射地域としての南シナ海、台湾島東側の確保です。そこには深い海があります。ちょうどロシアにとっての日本海の北部とオホーツク海です。戦略核潜水艦があるとされてました。大軍拡のきっかけは、李登輝さんが選ばれた台湾の総統選挙だったと思います。ここ1-2年、西太平洋の国々が、潜水艦を皆増強している何故なのかと原因を調べていくうちに中国に行き当たりました。春、沖の鳥島の周りを中国艦隊が示威行動したことがありました。あのときの写真の中国人の表情を見て、日清戦争前の長崎事件のことを高校のときに習ったことを数十年ぶりに思い出しました。当時の中国が持っていた東洋一の大艦隊の水兵が丸山遊郭で狼藉をはたらいた事件です。今後中国が配備するとされる4隻の空母も問題ですが、空母が配属される基地の隣には必ず潜水艦基地があります。今年の春、宇宙人と自称する首相が友愛を唱えた会議で、東アジアの首脳人は一様に息を潜めていたように感じました。南シナ海の航行の自由がアメリカによって強力に主張されていたからです。2014年半ばに海南島の基地に配置される中国の国産空母は南シナ海の南側の制空権を確保し、南シナ海の制海を目指していると考えられます。そうはさせないと米国が主張していたのです。ここ1-2ヶ月で最も気になっている記事は、フィリピンの情勢です。中国から武器の輸入を始めることになったというベタ記事がありました。その少し前に、フィリピンの政権トップが朝鮮半島有事の際に在韓フィリピン人の避難受入れを日本に期待しているとはいう記事です。確かフィリピンのスービック基地撤去の前に、華僑の財界人がフィリピン首脳に働きかけたとされています。バシー海峡の向こう側はフィリピンです。中国の動きは南シナ海と東シナ海の制海を目指すと考えると一貫した解釈が可能です。今回の記事はちょっと違和感を感じます。数年前の本には、大多数は古く、錬度が不足していると書いてありましたが、民主党が撤退させたインド洋の海上給油を現在行っているのは中国海軍ではないでしょうか。
中国漁船を見て中国人が船に酔うなど考えられませんね。
最初だけでしょう?鍛えれば、人間は皆同じ。
軍艦は、消耗品です。ミサイルも。とにかく並べておくことです。後は性能。日本の対戦能力は、わかりません。
大部分の装備がまだ旧式だからこそ、今叩いておくということですね。