数年前から噂になっていた中国と北朝鮮を結ぶ”新鴨緑江大橋”なのだが、二〇〇七年に中国側が費用を負担する好条件を出しながら、一向に話が進まない。一昨年一〇月に温家宝首相が訪朝し、一応の合意をみているのに一年三ヶ月も棚上げになったままである。
このために新鴨緑江大橋が完工すれば、有事に際して中国軍が北朝鮮に侵攻してくるのを金正日総書記らが警戒していると韓国筋から観測情報まで流れた。韓国の朝鮮日報は、これについて詳細なレポートを書いている。
そして「工事などできない厳しい冬の寒さの中で突然着工式が行われた」と皮肉まじりの記事となっている。情報ソースは北京の外交筋だが「通常通りの工事が行われれば、3年も過ぎれば実際に橋が姿を現すだろう。しかし北朝鮮が改革・開放に消極的な態度をとり続ける限り、橋が両国の経済協力拡大の基盤として定着するまでには、多くの時間が必要になる」と懐疑的。
幻の新鴨緑江大橋が姿をみせるのは、いつのことになるか分からない。
<中朝両国が12月31日に行った新鴨緑江大橋着工式は、両国経済協力の実質的な第一歩として注目されている。中国と北朝鮮はここ2-3年の間に様々な経路で経済協力について議論してきたが、目に見える形で実際に成果が現れることはほとんどなかった。昨年のはじめには豆満江下流の琿春税関と北朝鮮側税関をつなぐ橋の補修工事が行われたが、これは日本が支配していた時代に建設された古い橋を修理するものだった。
今回、着工式が行われた新鴨緑江大橋に関しても、両国の意見の違いと不信感が大きく、実際に完成するまでには数々の課題があったと専門家はみている。今回の着工式も、2009年10月に温家宝首相が北朝鮮を訪問し、首脳同士で合意に至ってから1年2カ月が過ぎてやっと行われた。
■路線などに関する意見対立は未解決
新鴨緑江大橋がかかる北朝鮮の新義州と中国の丹東は、両国を行き交う物資の70%が往来する交易の中心ルートだ。これまで実際の物資の往来には、1910年に建設された鴨緑江鉄橋が利用されてきた。丹東と新義州の旧市街地をつなぐ鴨緑江鉄橋は、自動車用1車線と単線の鉄道線路しかないため、双方から同時に行き来することはできない。そのため人的、物的交流が拡大するに従い、この橋だけでは当然、限界が出てくる。
中国は2000年の初めごろから新しい鴨緑江大橋の建設に向けて検討を進め、2007年には中国側が費用を負担するという条件で、新鴨緑江大橋の建設を正式に北朝鮮に提案した。両国の間でより活発な経済協力と人的交流を進めるためには、それに伴うインフラ整備が必要と訴えたのだ。しかし北朝鮮は中国の意図を疑った。丹東在住のある消息筋は、「北朝鮮は有事の際、中国軍がこの橋で自国に入る込むことや、中国が強く求める改革・開放に利用されることを心配した」と語る。
北朝鮮は2回目の核実験以降、国際社会からの圧力や国連制裁により孤立が深まったが、2009年10月に中国の温家宝首相が北朝鮮を訪問し、それまでギクシャクしていた中朝関係の修復に乗り出したことで、ついに新鴨緑江大橋の建設に同意した。しかしその後も両国の間で意見の違いが表面化した。昨年はじめに始まった実務協議では、橋を建設する位置について意見が衝突した。北朝鮮は上流の威化島を経て丹東と新義州の旧都心をつなぐルートを主張したが、中国はこれよりも10キロほど下流にある浪頭の丹東新区と新義州南部をつなぐルートを主張した。中国側の提案に応じた場合、北朝鮮は川沿いに数キロの堤防が必要になるとして、中国側に追加の費用負担を求めた。
■工事ができない年末に着工式を行った理由は
これまで時間を浪費するばかりで橋の建設には非常に消極的だった北朝鮮が、2010年中に着工式を執り行うことで突然中国と合意した。その背景には最近の南北関係や国際情勢が大きく影響しているようだ。韓国政府は今年を「統一準備元年」と宣布し、北朝鮮に様々な圧力を加えている。そのため北朝鮮はこれに対する一種の「応酬」として、着工式に応じたと考えられるだろう。
北朝鮮の事情に詳しい北京の専門家は、「単なる経済的な目的であれば、来年(2011年)3月ごろの工事が可能となる時期に着工式を行っても良いはずだ。しかし実際は工事などできない厳しい冬の寒さの中で突然着工式が行われた。これは中朝関係を誇示するメッセージを韓国に送るためだろう」と述べた。このように政治的背景が作用しているだけに、実際の工事は今後も国際情勢に左右されそうだ。
北京の外交筋は、「通常通りの工事が行われれば、3年も過ぎれば実際に橋が姿を現すだろう。しかし北朝鮮が改革・開放に消極的な態度をとり続ける限り、橋が両国の経済協力拡大の基盤として定着するまでには、多くの時間が必要になるはずだ」と述べた。(朝鮮日報)>
<北朝鮮の新義州(シンウィジュ)と中国の遼寧省丹東をつなぐ新鴨緑江(アプロクカン)大橋の着工式が昨年12月31日午前11時、丹東の浪頭で行われた。うわさだけが飛び交っていた中朝経済協力が、実質的な第一歩を踏み出したとみられる。
同日の着工式は、09年10月、中国の温家宝首相の訪朝で両国が大橋建設の計画を合意してから1年2ヵ月が経過した。着工式には、両国の高官級が出席したという。大橋には、総事業費17億人民元(約2924億ウォン)が投入され、3年後に完工される。橋の長さは6キロメートル、広さは33メートル。既存の鴨緑江鉄橋「中朝友誼の橋」から下流の方向に約12キロメートル離れている。大橋は、丹東浪頭の国門湾と新義州南部を結ぶ。浪頭には新都市が造成され、高層マンションが立ち並び、丹東市の新庁舎も移転される予定だ。
大橋は、1943年から使われてきた中朝友誼の橋に取って代わる予定だ。中朝友誼の橋は施設が古く、20トン以上の貨物車両が通過できず、単線で利用されている。大橋が建設されれば、両国の通行環境は大きく改善される。香港の大公報は、中朝友誼の橋を利用して1日2000人、2500台の車両が往来できるが、大橋では、1日5万人、2万台の車両が可能だと推定した。現在、中朝の貿易量の70%以上が、丹東を通って往来している。
何よりも、北朝鮮が中国との合作で推進する鴨緑江河口の島、黄金坪(ファングムピョン)、威化島(ウィファド)の開発にも、肯定的な影響を与えるものとみられる。大橋の位置は、黄金坪に近い。遼寧社会科学院辺境研究所の呂超所長は、「長期的な観点で、大橋は、現在建設中の大連とロシアをつなぐ東辺道鉄道と連結される。最終的に、中国と北朝鮮、韓国、日本、ロシアをつなぐ鉄道網になるだろう」と指摘した。
当初、大橋の建設と関連して、丹東市長が、遅くても昨年10月までには着工すると明らかにしていたが、先送りにされてきた。年を越すという見方も出ていたが、最近、突然、着工式の日程が決まった。(東亜日報)>
杜父魚文庫
6977 幻の新鴨緑江大橋が厳しい冬に着工式 古沢襄

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