6980 アメリカが懸念する中国の海洋覇権 古森義久

新しい年の国際情勢でやはり気になるのは中国の動向です。アメリカ側でも中国のさまざまな動きには深刻な懸念を向けています。その一部を報道しました。
〔ワシントン=古森義久〕米国政府内外では中国の海洋での領有権拡大への対応が安保、外交の重大な課題として論じられるようになった。南シナ海と東シナ海での中国の最近の覇権追求的な動向は米国にとって日本など主要同盟国との関係への新たな試練としても重みを増しているという。
オバマ政権が中国の南シナ海や東シナ海への新たな態度を米国の安全保障にも影響する懸念の新要因として重視するようになったことは昨年7月のクリントン国務長官の中国批判声明でまず明確にされた。
同長官はベトナムでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の地域フォーラムで「南シナ海の航行の自由は米国の国家利益だ」と述べた。この言明は南シナ海全体を自国領海扱いし、他国の艦艇の航行までを規制しようとする中国への正面からの反撃だった。以後、オバマ政権の内外では「中国の海洋領有権拡大」の動きは警戒や懸念の対象として急速に比重を増した。
米国防大学教授として長年、中国の海洋領有権の動きを研究してきたマービン・オット氏は昨年12月に発表した論文で「中国は長い年月、領有権の主張をぼかしてきたが、いまやその霧を完全に晴らし、人民解放軍幹部たちは南シナ海全体の中国の主権を宣言するようになった」と指摘し、米国としてはこの動きを重要な戦略的課題とみなして取り組むことを提言した。
オット氏は中国の領有権拡大の戦術について
①自国の主権の根拠に歴史的な経緯、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚など多様な要素を利用し、相互の矛盾を指摘されても平然と領土の拡大を進める
②南シナ海での実例のように自国の主張を武力で実行できる軍事能力がない間はもっぱらあいまいな態度を保ち、必要な軍事力を構築すれば、主張を一気に明確にし、強引な態度に出る
③南シナ海を事実上、自国の領海だとみなし、尖閣諸島をも中国領だと宣言した1992年の「領海法」での「歴史的中国領土」という概念や国連海洋法への反論での「沿岸経済排他的水域」という概念には国際的あるいは客観的な根拠がない―とも指摘した。
中国政府高官たちは南シナ海での領有権を自国の「核心的利益」と評する一方、東シナ海についてはその表現を使っていないが、米国側では両方の海域での領有権に対する中国の政策は同じだとみる認識が確立されている。
米国の大手外交研究機関の「外交評議会」はこのほど中国の海洋領有権拡大についての討論会を開き、南シナ海と東シナ海を同一視した問題提起をした。
同評議会側は前提として中国が昨年9月の尖閣諸島での衝突事件での日本側への強硬な言動によりこれまでの対外的な「平和的台頭」を完全に放棄した、という認識を示し、東シナ海、南シナ海両方での中国の強引な行動が米国の日本など同盟諸国への潜在脅威と位置づけた。
同討論会では外交評議会のエリザベス・エコノミー・アジア研究部長は「米国は中国の領土拡張に対し日本などの同盟諸国と共同の戦略認識を深め、中国が国際基準に違反した場合、必ず個別のケースごとに公式に抗議する」ことの重要性を強調した。
同評議会のシーラ・スミス日本研究部員は「日米両国政府は尖閣問題を最重視するという意思を共同で表明し、日米両国が共通の戦略目的を追うことを中国に周知させるべきだ」と提案した。同評議会のスコット・スナイダー朝鮮研究部員は「米国は中国との間海洋領有権の摩擦を抱えた同盟国や友好国のすべてに改めて米軍の支援を誓約するべきだ」と語った。
いずれも中国の領有権拡大には米国が正面から抑止の姿勢を堅持し、中国の影響を受けるアジア諸国には米国による防衛誓約を確認することの勧めであり、オバマ政権もすでにその方向へ向かって動き始めたといえる。
杜父魚文庫

コメント

  1. UGG より:

    あけましておめでとう
    今日は仕事がはじめました
    今年もよろしくお願いします

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