小選挙区制度というのは、二大政党を作り、政権交代がやり安くなるというのは、もっぱらのふれ込みだったが、民主党政権をみていると似たような二つの政党を作る仕組みのようにも思える。それほど民主党政権の保守化が進んでいる。
仙谷官房長官が菅政権の中核だという見立てから、民主党政権はリベラルの仮面をかぶった社会党政権と評する向きが多いが、それはチト違うのではないか、仙谷氏は全共闘路線をずっと以前に卒業し、社会党右派の構造改革路線でもなくなっている。本籍は社会党だったかもしれないが、現住所は前原外相、野田財務相らリベラル左派と同じである。
自民党も保守ではなくなっている。保守の仮面をかぶったリベラル右派が多いから、民主党とは五〇歩百歩、両党ともリベラル派が花盛りといっていい。だから民主・自民の大連立話が消えては浮かび、浮かんでは消える。
こうなると革新政党らしい”革新”や保守政党らしい”保守”の理念は、どこに行ったのであろうか。似た者同士の二大政党を作っても仕方ないように思う。朝日新聞系列のAERAが、いま衆院選があったとして議席予測をしてみると「民主182,自民244」と答えを出している。
選挙の議席予測で実績のある佐藤哲也・静岡大学准教授の試算による。試算は朝日新聞の「比例区ではどの政党に投票したいか」の世論調査の設問をデータとして活用したから、個々の選挙区事情を精査したものではない。現段階における総論的な傾向調査とみていい。
菅内閣の支持率や民主党の支持率低下をみれば「民主180,自民200」という予測値は各メデイアも持っているだろう。だが、これも総論的な傾向調査に過ぎない。
第一、菅首相が”飛んで火にいる夏(冬?)の虫”になる解散を好んでやる筈がない。AERAも先刻承知でお正月らしい話題レポートを書いたのであろう。
本題に戻ると、小選挙区制度は当初、予想した政治の仕組みとは異なる結果となっている。細川内閣の当時に朝日政治部で旧友だった石川真澄氏(故人)と「小選挙区よりも三人制の中選挙区」と異論を唱えたが、世をあげての政治改革の合唱にかき消されて、少数派だった。「今にみていろ」と縄のれんで二人で気勢をあげた昔が懐かしい。
小選挙区の制度によって小粒の国会議員が跋扈する時代になった。選挙民に媚びない椎名悦三郎氏のような大型の国会議員は、今の制度の下では出てこれない。似たようなリベラル派が花盛りとなり、一本、筋が通った真性の革新派、保守派が少なくなった。日本の政治が劣化しているのは、選挙制度に原因があると思うのは亡き石川氏と私だけなのであろうか。
杜父魚文庫
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