菅直人首相をはじめ民主党の執行部は現在、小沢一郎元代表に対し、衆院政治倫理審査会への出席を強く求めていますね。私はこれまで、小沢氏の政治とカネの問題について、いろいろと「おかしい」と指摘してきました。
そこで、小沢氏が国会の場できちんと証言するのであれば、それはそれでいいとは思います。まあ、やってもどうせたいしたことは言わず、いつものように「適正に処理している」で誤魔化すのでしょうが。
ただ、今回の菅氏らのやり方はあまりにも意図が見え見えで、シラケてしまいますね。内閣支持率の低迷で打つ手のない菅執行部が、困ったときの小沢頼み、溺れる菅は小沢でもつかむとばかりに、人気取りで「小沢たたき」に走っているのが分かり切っていますから。
そもそも、小沢氏の政治とカネの問題は今に始まったことではなく、政治資金での不動産購入だって組織対策費など党費の不透明な使途だって以前から指摘されていた。
それのに、何でこのタイミングなのか。本来ならば、野党側が求めていた通り、昨年の臨時国会中に開くべきだったのに、国会を閉じ、強制起訴も近い今になって急に息巻き出したのは極めて不自然ですね。
だいたい、平成15年に自由党が民主党と合流する際に、民主党代表として約3億円の党費を小沢氏の関連政治団体に「結納金」として寄付したのは菅氏その人です。
それが小沢氏の蓄財疑惑にもつながっているわけですから、菅氏がとことんクリーンな民主党と言ったり、長年、政治とカネの問題と戦ってきたかのようなポーズをとったりするのはちゃんちゃらおかしいのです。
菅氏は、最近になってから、新生党の政治資金が小沢氏の資金管理団体を経由して党所属の約90人の議員に配られたことに対して立腹してみせていますが、このやり方は小沢氏がずっと今までとってきた手法ではないですか。今まで口をつぐんできたくせに、今になって何を怒ったふりをしているのか。
また、政治とカネの問題をきちんと追及し、それと決別するというのであれば、鳩山由紀夫前首相の問題を無視していいはずがありません。鳩山氏は一昨年7月、自身の個人(故人)献金偽装問題をめぐって、衆院政治倫理審査会に出てきて弁明するよう議決されているのです。
これを鳩山氏は拒否して出席しなかったわけですが、小沢氏をあそこまで批判するのであれば、鳩山氏にも改めて政倫審出席を求めないと筋が通りません。まあ、もともと道理に従う気持ちなど欠片もないのが今の政権ですから不思議はありませが、一応、言い分を聞いてみようと思い立ちました。
そこで、6日の仙谷氏の記者会見で、官房長官番の村上智博記者にこの点をただしてもらいました。以下、そのやりとりです。
記者 民主党の小沢一郎元代表の国会招致についてお聞きします。民主党執行部は小沢氏に政倫審出席を求めているが、鳩山前首相も一昨年の7月に、故人献金偽装問題によって、政倫審で弁明するように求められて議決されたが、現在そのままになっている。
民主党が「クリーンな政治を」というなら、鳩山にもそのままにせずに、政府・民主党として小沢に対するように今後、政倫審出席を促すということはもうしないのか。もししないなら、なぜか。
仙谷氏 党の執行部の方にお聞きいただければと思います。あのー、その今の話は、総選挙直前の民主党が野党時代ですよね、じゃないですか。その話ですよね。
たぶん、だから今の執行部からすれば、ある種、総選挙というもので、何て言うんでしょうか、それまでの問題は当然のことながら、クリアされたというお考えではないかと推測しますが。
つまり、院の構成はもう変わっているわけですよね。一昨年の7月の時点と総選挙を経て。新議員が一昨年の9月からは来ているわけですね。当然、だからその前の国会のその種の議決というのは、ほとんど意味がないとお考えになっているんじゃないんでしょうか。つまり、継続になっていないと。法案で言えば廃案と。
記者 であれば、出席を求める考えはもはやないということでいいか。
仙谷氏 今の執行部からは聞いておりません。
記者 求める必要もないと、長官は考えているか。
仙谷氏 個人的な見解は申し上げるのは差し控えます。
…なるほど、その間、衆院選をはさんでいるので「禊ぎ」は済んだという言い分ですね。衆院選をはさもうとどうしようと政治の倫理の問題は何もクリアになるものではないし、鳩山氏をめぐってはその後も母親からの12億6000万円もの「子ども手当」提供問題や、脱税疑惑が浮上したというのに。さらに、鳩山氏は国会で約束した資料開示を、前言を翻して今は拒んでいるというのに。
いつもの三百代言の手口です。これは結局、小沢氏と戦うにあたって、鳩山氏とまで全面対決になるのは党内の勢力地図上まずい、というだけの話でしょうね。
仙谷氏が言っていることは、所詮その程度の戯言にすぎません。本質論とは何のかかわりもなく、言葉と屁理屈が物事の表層を撫でて通り過ぎていく。
仙谷氏は、自身が参院で可決された問責決議について、繰り返し「法的拘束力はない」と強調していますが、それを言えば政倫審の出席だって任意であり、小沢氏が出てこないからって、仙谷氏が批判できた話ではないでしょう。それなのに、何でこう偉そうなのか。
もう、この政権については、批判することも飽き飽きしてきましたが、それでもまだ権力の座にしがみついているので、いろいろと指摘せざるを得ません。夜寝ていても、この人たちの醜い言動をふと思い出して、怒りで目が覚めてしまうことがあり、実に健康に悪い。早く退場してほしいと心から願います。
杜父魚文庫
6999 仙谷氏、鳩山氏の政倫審出席拒否は擁護 阿比留瑠比

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