7019 中国の軍拡にどう備えるか 古森義久

日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」の紹介のつづきです。中国の軍拡がインド洋、太平洋の広大な地域の地政を変えている、というレポートです。
この部分では中国の軍拡の代表的な実例を記し、ではアメリカや日本はそれにどう対応すべきなのかを書いています。
<中国海軍>
「近年の世界で最も顕著な軍拡を進めている。2020年までに合計72隻の近代的攻撃型潜水艦を保有することとなる」
「ロシアから対艦攻撃巡航ミサイルを購入した。また、今後10年の間に航空母艦を最大6隻まで配備する計画を持っている。中国海軍の戦略は、すでに『沿岸防衛』から『遠洋防衛』へと変わり、東アジアでは最大の規模となった」
<中国空軍>
「ロシア製戦闘機『SU27』などの中国版の生産を急いでいる。次期の第5世代の戦闘機開発には『J13』『J14』などのステルス戦闘機をも含めて計画を進めている」
「空中給油により、戦闘機がはるか遠隔地まで一気に飛行できるようになった。その結果、在日米空軍の戦闘機や爆撃機への攻撃能力を高めた」
「中・長距離のミサイルは、日本列島全域をはじめ東アジアのすべての米軍とその同盟諸国軍の基地を射程に収めるようになった」
「米軍を対象とする対艦弾道中距離ミサイル『DF21D』を開発し、米海軍艦艇への脅威を高めた」
米国が今後の21世紀の対アジア戦略を考える場合は、まずインド洋・太平洋が対象地域となる。だが、その地域の安定は、今や中国の軍拡によって挑戦を受け、背後に黒い雲が広がっている、というのである。
やはり中国こそが、この広大な地域での最大の不安定要因、変動要因だというわけだ。日本としても、十二分に知っておかねばならない現実だと言える。
中国の進出は「東アジア」の枠に収まらないでは、米国はこうした暗雲の広がりにどう対処すべきだというのだろう。
同報告は、中国の軍拡に対する「21世紀の対策」として、米国が以下のような具体的措置を取ることを推奨していた。
・ 東アジアの前方基地での米軍の軍事駐留を強め、同盟諸国の軍との提携を強化する。
・ 日本、インド、オーストラリアを3点で結ぶ「三角形安保構想」を進める。
・ 東アジアに米海軍の第2の空母を常時駐留させる。
以上は、極めて具体的な対応策である。だが、この報告で最も注視すべきなのは、米国当局が日本や韓国を同盟パートナーとして見ながらも、アジア全体をより広い視野で眺めるようになった点である。
これからは、中国のグローバルな進出を見る際、従来の「東アジア」という枠組みを捨てて、インド洋から太平洋までという巨大な枠組みを適用すべきだということでもあろう。
杜父魚文庫

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