7021 官房長官に枝野氏推す声 古沢襄

「群盲象を撫ず」・・・仙谷官房長官の後任をめぐって、江田参院議長、野田財務相、北島防衛相、枝野幹事長代理など様々な臆測が飛び交っている。中には仙谷留任説、岡田幹事長と仙谷官房長官の入れ替わり説まで飛び交う始末。
「衆盲象を摸す」ともいうが、元来は、涅槃経・六度経(ろくどきょう)などで、人々が仏の真理を正しく知り得ないことをいった。「群盲」も「衆盲」も差別用語ではないかという声まで飛び出すご時世。『原始仏典』にある用語を差別用語だと排するのも、どうかと思う。
この用語の反対語は「一を聞いて十を知る」。その「一」を菅首相も岡田幹事長も口を閉ざしているから、「十」の知り様もない。ただ言えるのは菅首相と仙谷官房長官の距離が以前よりも出てきた感じを受ける。それに反比例して岡田幹事長の存在感が目立っている。
仙谷官房長官の仲間、前原外相ら凌雲会(りょううんかい)のメンバーにとっては気になる動きであろう。凌雲会は2002年に、仙谷由人・前原誠司・枝野幸男氏らを中心に結成された。盟友関係にある野田財務相の花斉会(かせいかい)とも統一歩調をとることが多かった。
このグループから仙谷留任説が出るのは無理もないが、それが叶わぬのなら枝野官房長官あるいは野田官房長官説が出るのは自然の成り行き。旧日本新党や新党さきがけ出身の議員が多い。2004年の党代表選では岡田克也氏を無投票当選させ、2005年9月の党代表選では、菅直人氏を二票差で破って前原代表を作る原動力となった。菅氏が屈折した気持ちを持つのも無理からぬ歴史がある。
菅政権の誕生で「脱小沢」路線を唱えたこのグループは、菅・鳩山・小沢トロイカ路線が生まれるのと対峙している。その流れが今度の内閣改造、党人事でも続いているから、通常国会での野党対策として仙谷氏が退くことになっても、主流派として凌雲会と花斉会は、菅首相に影響力を行使するであろう。菅首相も岡田幹事長もこれを無視するわけにはいかない。
”群盲”から様々な観測気球があがるのも、見方によっては菅・岡田に対する牽制とみた方がいい。そんな視点で次の時事通信社の記事を読む必要がある。
<菅直人首相は9日、通常国会召集前に断行する内閣改造・民主党役員人事の検討を続けた。首相は、参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相は交代させる方向で調整しており、仙谷氏の後任には枝野幸男幹事長代理を推す声が出ている。ただ、首相は、両氏の交代を最終決断した場合でも、小幅の改造にとどめる意向だ。
枝野氏は、仙谷氏と同様、前原誠司外相のグループに属し、小沢一郎元代表に批判的な有力議員の一人。昨年6月の菅政権発足時は幹事長に抜てきされた。枝野氏を推す議員には、「脱小沢」路線を堅持しつつ仙谷氏交代による政権内のあつれきを回避するには、同じグループの実力者を後任に起用するのが得策との判断があり、首相を支えるベテラン議員は「『反小沢』を貫いてきた枝野氏が望ましい」と述べた。
官房長官には枝野氏のほか、首相のグループの江田五月前参院議長らの起用を求める意見もある。一部には、仙谷、馬淵両氏の続投論も残っている。 
これに関連し、民主党の岡田克也幹事長は9日のNHKの番組で、野党が仙谷、馬淵両氏が続投なら国会審議に応じない方針であることについて「法的に辞めないといけないものではないが、参院の意思が示されたことは真摯(しんし)に受け止め反省する問題だ」と述べた。また、首相に近い政府関係者は、改造の規模について「現在の菅改造内閣が発足から4カ月に満たないから、閣僚の交代は最小限にとどまるだろう」と述べた。
首相は9日午後、衆院議長公邸に横路孝弘衆院議長を訪ね、28日召集で調整している通常国会の運営に関して意見交換。横路氏は「国会は最初が大事だ。トラブルなく開けるようにしてほしい」と要請した。この後、首相は野田佳彦財務相とも首相公邸で会談、通常国会で年度内成立を目指す2011年度予算案と関連法案に関する説明を受けた。(時事)>
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