日本の政局を激しく揺さぶることとなる小沢一郎起訴という展望を眺めてみました。そのためにはまず現状の認識です。
<<【核心】小沢氏 今月中にも強制起訴 “最強弁護団”同士の攻防>>
「4億円の不記載」扱いにも注目
民主党の小沢一郎元代表(68)の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、検察官役の指定弁護士による補充捜査が大詰めを迎えている。小沢氏は1月中にも強制起訴される見通しだ。立件する側、弁護する側の動きを探った。
■国民主役の刑事司法
「国民の責任で黒白をつけようとする制度である」起訴を求めた検察審査会の議決書(昨年10月公表)には、国民主役となった新しい刑事司法の姿勢が色濃く反映されていた。
起訴議決を受け東京地裁は、検察官役となり起訴の手続きを行う「指定弁護士」に、第二東京弁護士会所属の大室俊三(61)▽村本道夫(56)▽山本健一(46)-の3氏を選んだ。
中心的役割を担う大室氏は、リクルート事件、旧日本債券信用銀行の粉飾決算事件を担当するなど刑事事件に精通。村本氏は、シンクタンクで政治資金規正法の抜本改正を提言するなど、政治資金規正法に造詣が深い。山本氏も刑事弁護の経験が豊富だ。
3人は連日のように東京地検内の執務室に通って捜査資料を読み込んできた。現在は、公判に向けた捜査報告書の作成などに取りかかっているという。
■聴取要請の方針
補充捜査が大詰めを迎える中、小沢氏への事情聴取がどうなるかが関心を呼んでいる。指定弁護士は今月7日、小沢氏に聴取を要請する方針を明らかにした。ただ、小沢氏の弁護団は「協力できる範囲は限られている」と拒否の構えだ。
それでも指定弁護士側は聴取にこだわる。検察審査会の議決が、特捜部の捜査について「十分とは言い難い」と指摘しており、議決を尊重したいとの思いがあるとみられる。
大室氏は強制起訴の時期について「(通常国会など)政治的状況には配慮しない」とも話しており、聴取の有無や国政の状況にかかわらず、1月中にも起訴する公算が大きい。
こうした指定弁護士の動きを牽制(けんせい)するように、小沢氏側は“徹底抗戦”の構えを示してきた。
小沢氏は元秘書らと共謀して、陸山会が平成16年に購入した土地代金を17年分の政治資金収支報告書に記載したなどとして、同法違反(虚偽記載)の罪で告発された。
昨年4月の検察審査会の1回目の議決では告発内容をそのまま「犯罪事実」と認定。だが、昨年10月に公表された起訴議決では土地購入の原資となった小沢氏からの借入金4億円の不記載についても「犯罪事実」と認定した。
このため、小沢氏側は「告発事実を超えた議決は違法」と主張。議決仮差し止めなどを申し立て、最高裁で「刑事裁判で争われるべきだ」と退けられた経緯がある。指定弁護士が起訴内容にこの4億円の不記載を盛り込めば大きな争点になるのは確実だ。
■「カミソリ」が弁護
現在のところ指定弁護士側は、「基本的には検察審査会の議決に沿って起訴するのがわれわれの立場」と、4億円を起訴内容に含む方針を示している。
小沢氏側は昨年12月、刑事裁判に向け新たに弁護団を発足させた。筆頭が東京弁護士会所属の弘中惇一郎弁護士(65)。法曹界では「カミソリ弘中」「無罪請負人」と呼ばれる。
郵便制度不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さんの弁護人を務めたほか、「ロス疑惑」事件、薬害エイズ事件で被告らを無罪に導いた。
ほかにも、弘中氏とともにロス疑惑事件や薬害エイズ事件などを担当し、名誉毀損(きそん)訴訟を多く手掛ける喜田村洋一弁護士(60)らが脇を固める。
■公判前も長期化?
21年5月の改正検察審査会法の施行以降、起訴議決を受けて強制起訴されたケースは3件。いずれもまだ、公判が開かれておらず、争点整理などを行う公判前整理手続きが難航している様子がうかがえる。
小沢氏の場合も、公判前整理手続きが開かれる可能性は高い。その場合「4億円の不記載」の扱いや、4億円の原資に触れるか否かといった点などが激しい争点となる可能性がある。攻めも、守りも「やり手弁護士」の対決だけに、激しい攻防となることが予想される。(産経)
杜父魚文庫
7036 小沢問題はいま 古森義久

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