7049 なんとも場当たり、改造内閣 花岡信昭

これで政権浮揚につながるのかどうか。菅第二次改造内閣にはいくつもの疑問がつきまとう。年明けからがぜん高揚感あふれる菅首相だが、周到に練った布陣であるかのようなよそおいをこらしながら、どうも「場当たり主義」がにじむ。
要は「小沢切り」「仙谷切り」という二つの壁を乗り切る必要があったということだ。反小沢シフトを徹底させるために、官房長官に史上最年少の枝野氏を持ってきた。仙谷氏は党の代表代行でそれなりに遇した。
「菅―仙谷ライン」が国民の批判を受けた最大の要因が何であったのか、菅首相は知ってか知らずか、その肝心なポイントに真正面から向き合おうとしない。
「尖閣」をめぐる一連の対応で国家観の欠落をみせつけてしまったのが支持率急落を引き起こしたのではなかったか。日中首脳会談でペーパーを読み上げた情けなさがまさに象徴的であった。
改造内閣の顔ぶれを見て、まず指摘しなくてはならないのは、参院議長経験者の江田五月氏の法相起用だ。官房長官候補として浮上したため、義理を果たしたということか。
参院議長というのはいうまでもなく三権の長である。これまで参院議長経験者が閣僚になった例はない。
これは政治のスジからして、絶対にやってはいけないことだった。参院議長の権威を自ら落とすことになるからだ。首相経験者が閣僚になったことはこれまでもある。これは同じ行政分野の話だ。
立法、司法、行政の三権分立を国家構造の軸としている以上、立法府の長をつとめた人が閣僚になってはいけない。それも首相代理となる順位ではかなりの上位に置かれている。
一時的に首相の役割を担う局面があるかもしれないのだ。立法と行政の双方でトップになってはいかにもまずい。ここは政治の矜持が求められるところだった。そういうことを進言する側近がいないというのも、この政権の脆弱さを象徴している。
与謝野馨氏の経済財政相、藤井裕久氏の官房副長官というのも、もっときちんとした説明が必要だ。
与謝野氏は東京1区で海江田万里経済産業相と戦った相手である。西岡参院議長がその点を取り上げて「民主党議員と戦った人を閣僚にするとはもってのほか。これこそ不条理の政治だ」などと批判したのも政治のスジからいえばその通りだ。
おそらくは与謝野氏は次の総選挙には出ないということを確約したのであろう。そうとでも考えないと、与謝野氏起用に対して民主党内がすんなりと納得するとは思えない。
自分と戦った相手を閣僚にされたら、議員心理としてたまったものではない。そういう首相(党代表)を信頼できるか。
与謝野、藤井両氏を取りこむことで、消費税引き上げと社会保障改革に本格的に取り組む構えを強調したかったのであろう。
たちあがれ日本を離党して菅首相の要請に応じた与謝野氏だが、これが政界再編の大きな糸口になるというのなら、まだ分かる。だが、その気配はほとんど感じられない。
まあ、岡崎トミ子氏を外したのは当然といえば当然だ。ソウルの日本大使館前で反日デモに参加した人である。そういってはなんだが、公安の監視対象になるような人が国家公安委員長に起用されていたことはなんとも「不条理」ではあった。
杜父魚文庫

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