7073 またまたどうでもいい話ですが… 阿比留瑠比

またまたご無沙汰しています。とにかく雑用が多い日々を過ごしていて、別に紙面にたいした記事を書いているわけでもないのに、エントリの更新がはかどりません。なので、特にここでお知らせしたいような取材結果もないこともあり、本日はどうでもいい話でお茶を濁そうと思います。あまり、読者の方には関係も関心もないかもしれませんが、少し酔っているので、たまにはここを読んでいるかもしれない後輩記者に向けて書きたいと思います。あしからず、ご了承ください。
私が何かの縁で新聞記者になって数年たってふと気づいたことは、何を見てもどういう場面に遭遇しても、それを記事にするときはどう表現しようかと自分が意識していたことでした。美しい夕陽を見ても、出張先で歩いた見知らぬ町並みを見ても、どう書けばいいのかと、そればかり気になりました。映画を観ても、誰かと愉快な時間を過ごしても、それを他者に伝えるにはどんな言葉を使うべきかとか、そういう余計な思いが頭をよぎりました。
これは職業病というか、病気そのものかもしれないな。そう思い始めた今から15年ばかり前、社会部に所属していたころのことです。一つ年次が上の先輩と飲んでいて、「俺も同じだ」という話になり、やっぱりそうかと意気投合したこともありました。その先輩は、そういう自分が嫌になり、社の海外留学制度に応募、合格し海外で暮らしたりもしたのですが、やっぱりその癖は抜けなかったようです。
その後、私は平成10年7月に政治部に異動になりました。それで当初は、ただただ一日中、首相の動静を追い続け、官邸や国会の廊下であるとか、首相の夜会合の店の前であるとか、担当議員の自宅や宿舎の前であるとか、ひたすら立ち続ける日々が続きました。対象は中年や、あるいは老年の貫禄のあるおっさんばかりだし、特別、描写したくなる相手ではありません。
また、当初は政治部の仕事をよく理解していなかったので、社会部時代のように、連載企画記事で趣向を凝らし、場合によっては涙を誘うような記事を書くこととは無縁になったのかな、とも一瞬思ったのでした。でも、やはり、記者である以上、そういうものでもありませんでした。表現し、少しでも現場の空気や、自分の伝えたいことを少しでも理解してもらうためにとる手法には変わりはありません。
政治家と政治家との会話、その場の雰囲気、どういうシチュエーションと歴史的背景の元にその動きがあったのかとか、やはりそこには、何とか知り得たこと、聞き得たことを臨場感をもって伝えたいと願う以上、描き、クリアしなければならない表現上の課題がたくさんありました。それは、ときに政治家の服装であったり、会話と会話の「間」であったり、かつて同じようなことが政界であったという薀蓄であったりさまざまですが、これはやはり先輩、上司の手法を盗み取り、自分なりに改良を試みるしかありません。
もちろん、今こんなことを偉そうに述懐している私自身の記事も、おそらく読者のみなさんからは「なんだこの記事は」と厳しい評価や、あるいは文章上の難点への指摘はたくさんあることと思います。自分でも、納得のいく記事なんてほとんど書けないし、いつも、これでいいのだろうかと不安になるのです。
ただ、かつてのように、森羅万象何を見てもどう表現しようかと気になることについて、こんなんでいいのかと反省する気持ちはなくなりました。これが自分の仕事であり、全然結果に表れていないかもしれなくても、そういう意識を持ち続けることは、むしろ職業上、当然なのだと考えるようになりました。開き直ったのか。
深夜、ふと目覚めても「こう書こう」と考え、通勤途上、立ち止まって手帳に記事の筋立てや表現をメモにすることも、夜、居酒屋でビールを煽りつつ、コースターにボールペンで記事のアイデアをにじんだ文字で殴り書きし、持ち帰っても判読できないということも、記者なんだから当然だと思うようになりました。あるいは、どうやってネタをとろうか、相手に食い込もうかという手順であってもそうで、四六時中、頭のどこかにあっていいのだと。
夜中の2時でも3時でも、ふと何かがひらめいたときに起きてメモをとっておかないと、寝直すとだいたい忘れてしまいます。これはいつも、後悔しているところです。同時に、食事中でも、電車の中でも、ふと頭に浮かんだことは紙がなければ手のひらにでも書いておけばいいと思います。
私はもともとバランスのとれていない、偏った人間であるかもしれませんが、仕事をするということは結局、そういうことであるのではないかとまあ、年をとるにつれ(まだ中年ですが)、そういう風に思うようになったという話です。
おそらく、何の役にも立たず、参考にもならないでしょうが、こんな弊紙をはじめ報道各社がいつどうなるか分からない時代に記者職を選び、また、今後選ぶかもしれない奇特な人に、酔った勢いのせいで何か言いたくなったのでしたためました。ささやかなエールのつもりで。
うーん、ブログに書くような中身でも、人さまの目にさらすほどの内容でもないかもしれませんが、せっかくここまで書いたので、アップします。若い記者は、紙面に載ろうが載るまいが、とにかく書いて書いて書きまくって、かつ常に誰よりも早く書くことを心がけてください。はい。
杜父魚文庫

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