7085 中国のJ-20(殲20)が与えた衝撃 宮崎正弘

中国のステルス戦闘機、試験飛行はいったい何の目的か。米国は台湾にF16最新バージョン供与へ。台湾は緊急かつ大規模なミサイル実験。
中国空軍が突如、公開したステルス機J―20の映像。
http://video.foxnews.com/v/4489226/chinese-stealth-fighter-jet-on-the-runway
胡錦濤の訪米直前の1月11日、中国は四川省成都でこれ見よがしのステルス機の飛行実験を十五分にわたってデモンストレーション。フェンス前には大勢の見物人がいた。やらせ半分?甚大なる衝撃が拡がった。
実験飛行はゲーツ国防長官の北京訪問二日目という絶好の政治宣伝にタイミングを合わせた。しかも軍事委員会主席でもある胡錦濤が、そのことを知らなかった。軍の独走ぶりが露呈した。
 
米国国防省が憂慮するのは、中国のJ-20(殲20)が順調に生産され、十年以内に配備されると仮定した場合、米国自慢のF22ラプター(世界最高のステルス戦闘機)がかすんでしまう。
すでにF22ラプターは製造を中止しており、米軍は次期ステルスF35を開発中。西側世界の殆どが輸入契約を終えたが、日本だけは導入の検討さえしていない。
ロシアはスホイT50型を開発中で昨年テスト飛行に成功した。四年以内に本格開発に踏み切るとされる。
最大の衝撃が走ったのは台湾である。台湾の軍は沈黙したまま。正式コメントは一切ない。そのため、馬英九政権はただちに空軍に指示をだして大規模なミサイル実験を行い、国民の動揺を抑えようとした。
日本政府? 軍事情勢を理解できない永田町の住民らは、これが意味することを理解できていない。だから反応ゼロ。
▼沖縄どころか、日本領空全域を自由に飛べるのがステルス戦闘機だ
さてJ-20が中国で製造された初めてのステルス戦闘機のプロットタイプであるとすれば、これはたいへんな軍事的脅威となる。
戦闘機がレーダーに把握されなければ日本上空に突如現れても在日米軍も自衛隊も迎撃の可能性がなくなる。米空母艦隊は、このステルス戦闘機とミサイル「東風21D」で攻撃をうけるとなると東シナ海、台湾海峡への出動をためらうだろうから、グアム以東へ引き下がらざるを得なくなり、かの「第二列島線」が突破されることになる。
日米安保条約は空文化する懼れがある。
このJ-20ステルス機の映像が中国のネット上に流れ出したのは昨年師走だった。台湾の軍関係者は、これはフェイク(偽物)とみなしていた。こんな短時日裡に、ハイテクの精度など技術的見地からみても中国が作れる筈がないとタカをくくっていた。
最初の映像は図体が大きく、前半部が米国のステルスの模倣デザイン、後ろ半分がロシアのステルス機を真似ていると言われ、政治宣伝が目的だろうと推定された。
ところがゲーツ国防長官の北京訪問をまって、堂々のテスト飛行を行うに及んで、台湾は青ざめる。台湾軍はコメントを控えて沈黙した。
軍事専門家のあいだでは、J-20プロットタイプの映像を見る限り、大型であり、飛行距離がながく戦闘能力はF18ホーネットをしのぐのではと危惧される。また数百もある中国空軍の基地、そのうちの幾つかは「えんたい」ではなく、地下格納施設を持つために予防的攻撃(プリエンプティブ・ストライク)も出来ない。
しかし他方、この脅威の出現は米国をして台湾が長年待ち望んだF16新型戦闘機売却ならびに現存の台湾空軍保有146機のF16旧型機への新型サイドワインダー空対空ミサイルへの売却に合法性を与えた。また台湾は大規模なミサイル実験を行ってみせたのも、その表れである。
 
▼政治心理作戦で最大の効果を狙った? だけか。
アジアタイムズ(1月21日付け)によれば、台湾の或る軍事専門家は「J-20が円滑に開発され配備されるのは時間がかかるだろうし、技術的に米国ステルスを凌駕するとは考えにくい。この時期を選んでテスト飛行を内外に見せつけたのは政治宣伝効果と心理的威圧を最大限とする作為であろう」と分析している。
日本の専門家も、これは「概念実証機」であり、本格化した場合はデザインもまったく違う物になるだろうという。(『週刊プレィボーイ』、1月31日号)
   
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(読者の声1)貴誌3201号の「毎日一行」に「ヨサノ入閣の狙いは消費税。菅首相は六月解散を念頭に入れたようだ」とありました。与謝野氏を引きこんだのは明らかに消費税シフトですし、藤井裕久を官房副長官にしたのも財務省対策ですね。
変動要因があるとすれば、予算成立後の予算関連法審議段階で紛糾して消費税議論に行きつく前に解散になってしまうかもしれないことです。それを引き金に民主党は分裂する可能性もあります。3月以降の政局は面白くなりそうです。(TS生、白金)
(宮崎正弘のコメント)TPPで小泉の二番煎じ解散を六月にやるのでは? 産経までTPP賛成にまわってますから、マスコミは郵政改革キャンペーンと同様のことをやらかす怖れなきにしもあらず。
杜父魚文庫

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