7163 パキスタンの核兵器は110発 宮崎正弘

まもなく英・仏を凌駕し世界第四位の核大国に・・・。オバマの「核なき世界」戦略は、かくして踏みにじられた。
オバマ大統領は後世の歴史家から「無能、善意の馬鹿」というレッテルを貼られる懼れがある。
オバマが「核なき世界」と演説してノーベル平和賞に輝き、その米国が年間10億ドルの支援を注ぎ込んでいるパキスタンは、平然と米国の顔を泥で汚し、核兵器を百十発保有していた。
筆者は前年までパキスタンの核を60基と予測してきた。これは米国の情報機関が把握する数字であり、セーモア・ハーシェがいみじくもすっぱ抜いたように「パキスタンが政変もしくはイスラム原理主義過激派の政権に陥落した場合、米軍特殊部隊がパキスタンの核施設を管理する秘密の取り決め」が存在するらしいなどの情報に立脚した。
駐イスラマバードの米大使は機密外交公電のなかで「パキスタンの核物資の管理はきわめて杜撰であり、襲撃や盗難に脆弱である」と報告していたことはウィキリークスの暴露で判明している(NYタイムズ、二月一日)。
 
とくに濃縮ウラン製造施設、プルトニウム原子炉など軍管理の実態が杜撰であるとの報告はオバマ大統領にも届いていた。
にも関わらずパキスタンをここまで甘やかし、ついには百十基、くわえて現在の分裂物質の貯蔵から推計して「パキスタンは数年以内に二百発の核兵器を保有し、世界第四位の核大国になる」(ヘラルドトリビューン、二月二日)という驚くべき予想に繋がるのだ。
パキスタンの核兵器技術は中国から、胴元はサウジアラビアなど。
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オバマ政権が提唱する「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約」(Fissile Material Cutoff Treaty)とは何か?
オバマ大統領の「核なき世界」の演説は下記のとおり。2009年4月5日、チェコ共和国フラチャニ広場(プラハ)での演説(米国大使館訳)。
〈核兵器のない世界〉
米国は、核兵器のない世界を求め、その方向に動くために具体的な措置を講じる。核兵器を取得しようとする国が増え、核物質の管理があまりにも多くの場所でずさんなままになっているなかで、テロリストが核兵器や核兵器製造用物質を取得する危険が高まっている。
ジョージ・シュルツ、ビル・ペリー、ヘンリー・キッシンジャー、サム・ナンらが警告しているとおり、これらの危機に対処するためにとられている現在の措置は十分ではない。核兵器が存在する限り、強くて信頼できる抑止力を維持するが、米国は、核兵器への依存を軽減し、最終的に核兵器を廃絶してしまうような世界における方が安全でいられる。世界中の核兵器をなくすという目標を米国の核兵器政策の中核的要素とする。
〈核兵器および核兵器製造用物質の厳重管理〉
我が国および世界に対する危険を劇的に減らすため、核兵器および核物質を厳重に管理し、処分し、また、その拡散を防ぐために他の国々と協力する。核兵器利用可能物質が四〇ヶ国に存在する。四年以内に無防備な場所に置かれたすべての核兵器利用可能物質を厳重な保管下に置くための世界的取組の先頭に立ち、他の国々と協力する。
われわれは、他の国々と協力して、核兵器のセキュリティーを強化する。これらの多くの措置を世界的規模で実施する合意を得るために、国連安全保障理事会の常任理事国および他の主要国の指導者とのサミットを2009年に(そしてその後は定期的に)開催する。
〈核分裂性物質の生産に終止符〉
検証可能な核兵器用核分裂性物質生産禁止条約の交渉を行う。平和目的の原子力開発の隠れ蓑の下で核兵器計画を作り上げるーーあるいは作り上げる寸前まで行くーー国々が出ないように核兵器技術の拡散を防ぐために努力する。
国際原子力機関(IAEA)の予算の倍増を図るとともに、濃縮施設を建設しない国々に燃料供給を保証するIAEA管理下の核燃料バンクの創設を支持し、核不拡散条約(NPT)の強化に努める。
〈冷戦時代の核態勢に終止符〉
我が国の安全を高めると同時にNPTの下での約束の履行に役立てるため、米ロの核兵器の検証可能な大幅削減を追求し、また、世界全体の核兵器を劇的に減らすために他の核兵器国と協力する。ロシアと協力して、できるだけ多くの核兵器を冷戦的な迅速発射態勢から外し、戦略兵器削減条約(START)の主要条項をーーその極めて重要な監視・検証要件を含めーー延長する。
新しい核兵器を開発しない。そして、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を支持する超党派のコンセンサスを作り出すために努力するーーCTBTは、NPTを強化するとともに、核兵器活動の国際的監視に役立つ。
杜父魚文庫

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