7169 加藤紘一氏のボケ話に会場は大笑い 古沢襄

認知症といっても「アルツハイマー型認知症」や「脳血管性認知症」など、いろいろある。二月生まれの私は運転免許証を更新するために、一日に高齢者講習の「認知機能検査」を受けてきた。七十五歳以上の者は、この認知機能検査を受けないと運転免許証の更新ができない。
アルツハイマー型認知症の患者は推定100万人。ブレーキとアクセルを踏み違えたり、赤信号を青信号と間違える、高速道路の進入口を間違えて逆方向を走る・・・こんな事故が跡を絶たないから老人運転は嫌われる。
認知機能検査は三段階の判定を受ける。総合得点で①三十六点以上は「記憶力、判断力が低くなっている」、②0点超三十六点未満は「記憶力、判断力が少し低くなっている」③0点以下は「記憶力、判断力に心配はない」・・・自分がボケ老人の仲間入りをしているという自覚があるし、高血圧の血圧降下剤を服用して30年以上も経つから、①の三十六点以上は覚悟の上だったが、総合点はマイナス0・958点。まだボケていないと受験者の中でただひとり③ランクのお墨付きを貰った。
やはり、もの書きは年がら年中考える習慣がついているから、ボケがくるのが遅いのかもしれない。同じ年齢の女房はとうの先に三十六点以上の①ランク。若い時にしっかり者だった方がボケが早くくるという説もある。ボケ女房を看病する日がいずれくるのかもしれない。
早速、認知機能検査の結果通知書を持って警察署で運転免許証の更新をした翌日の二日、ある会合で加藤紘一氏が岸元首相の昔話をしていた。岸氏は竹下元首相に同じことを何度も繰り返すのはボケの始まりだと教えたという。
御殿場に引き籠もった岸さんのところには月に一度は遊びに行った。「歳をとったら転ばない、風邪をひかない、義理を欠くのが長生きの秘訣」と教えて貰ったが、ボケ話はなかった。私が未だ三十歳台だったからボケ話は早いと思ったのだろう。
加藤紘一の話にはオチがある。竹下元首相はこの話を加藤氏に七回もしたというから、会場は大笑いに包まれた。笑いながら、さて自分が毎日の様にエッセイまがいのものを書いているが、同じことを何度も書いているのではないか、と気になる。
老人になれば、誰もが記憶力、判断力が減退してくる。自然の摂理と思い定めるしかない。記憶力、判断力が衰えないのは”お化け”。人並みにボケる方が健康的だと思っている。犬もボケるそうだ。
杜父魚文庫

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