韓流ドラマに夢中になっていたカミサンが最近はお笑い番組を見ながら「アハハ、おっかしい!」と腹をよじって笑うようになった。「韓流は卒業かい?」と問うと、「ドラマは頭を使うから結構疲れるのよ。お笑い番組は頭を使わないから楽なの」。
看護婦という命にかかわる仕事柄、オフのプライベートでは「安らぎ」というか「弛緩」を求めるのだろう。テレビを見れば緊張が緩む、言葉を換えればバカになれるのだろう。
小生がブンヤになったのは小学5年生(昭和37、1962年)時代に見た「NHK特派員報告」の影響がすこぶる大きい。その後は「テレビを見ると脳みそが溶け出す」ような気がするので、高校時代からはテレビを遠ざけ、長じて「民放テレビは暗愚、愚鈍、無知、蒙昧」とほとんど“憎んで”いた。
それでも昨年までは政治・経済ニュースを中心に1日に30~60分ほどは見ていたのだ。
それがどういうわけか今年になってからまったく見なくなった。気づいたら「そう言えばテレビを見なくなったなあ」という感じである。なぜか。
もともとスポーツ、芸能、事件・事故に興味はなく、ニュース番組では辛うじて政治・経済に関心があったのだが、こと政治については民主党政権ではど素人の三流芝居を見せられているようで、“とてもじゃないが鑑賞に耐えない”と急速に関心を失ったのだろう。
また、テレビは時間通りにテレビの前にいなければならず、「必要な時に必要な情報を」というオンデマンドに慣れた身には「テレビは面倒臭い不便なメディア」で、それが鼻についてきたこともあるだろう。
「テレビは女・子供の見るもので、きちんとした教育を受けた大の男が見るものではない」「民放のテレビ屋はバカばかり」という認識・偏見もテレビ離れに拍車をかけたのかもしれない。
あるいは単なる老化現象で、社会への関心が薄くなってきたのか。脳細胞は加齢とともに減少・萎縮するばかりだろう。「脳の雑学」によると、
<脳が萎縮したからと言って脳の機能に衰えが出るかと言えばそうではありません。死滅した脳細胞が担っていた役割は確かに衰えてしまいますが、残っている脳自体の働きは基本的に若い頃と変わらないそうです。死滅した細胞の周辺組織が再び役割を代行しようとするので基本的な機能は維持しながら萎縮していきます>
「脳自体の働きは基本的に若い頃と変わらない」というのは真っ赤な嘘である。それが言いすぎなら「善意すぎる解釈」だろう、周りを見てご覧、我が母を含めて呆け老人ばかりで、レーガンもサッチャーも呆けた。呆けないのはごく少数派、レアアースだ。
テレビを見続けると確実に脳みそは劣化する。
鳥取県教育委員会の「テレビ視聴時間と学力・体力の関係」調査でもそれは明白だが、TOSS-TWO WAYの鈴木康一氏によると、小学生を対象とした「テレビの視聴時間と学 力」調査では、5段階評価で、5(上位)30分、4(中上位)1時間30分、3(中位)2時間、2(中下位)2時間30分、1(下位)3~6時間という。
バカな子供はテレビ漬である。
<テレビの視聴時間(ファミコン含む)と学力の間にはかなり高い相関関係があることがわかります。事実、学力の高い子は総じてテレビ・ファミコンで消費する時間は1日あたり平均30分ほどです。
テレビの視聴時間の短い子どもに共通していることは、家庭でテレビの視聴時間についてのルールが決まっていることです。「どんな番組を見るのか」「どのくらいの時間見るのか」は、実は大人の影響が大きいのです>
東京・東葛飾高校教諭の福島毅氏もこう指摘している。
<全国学力調査によればテレビやビデオ・DVDを日に3時間以上みたり聞いたりする児童生徒は、
小学校 34.0%(07年)⇒45.8%(08年)
中学校 32.4%(07年)⇒38.8%(08年)
視聴時間が短い子供の方がテストの正答率が高い傾向が見られ、テレビやビデオ・DVD、そして携帯(メール・通話)、ゲームなどのメディアが児童・生徒に与える影響については、われわれ大人の想像以上の影響を及ぼしているのではないかと思われる>
子供に具合が悪いのなら大人にも具合が悪いのは当たり前で、岡田正彦・新潟大学教授はこう書いている。
<オーストラリアでテレビを見ている時間と寿命との関係を分析するというユニークな大規模調査が行われた。9千人近い成人男女を7年ほど追跡したものだ。まず全員に日々、テレビやビデオを見ている時間を1週間の平均で答えてもらった。
7年後、毎日4時間以上テレビを見ていた人たちは、同2時間以下の人に比べ死亡率が46%も高くなっていた。1時間増えるごとに死亡率が11%増える計算になる>
小生は60年生きてきて、現役時代は通算数千人に取材したが、「テレビを見ていて賢い人」を1人として知らない。賢い人との会話でテレビが話題になったこともほとんどない。「テレビを見ればバカになる」という小学5年生のときの小生の直感は間違いではなかったのだ。
まあ、お笑い番組を見て余生をアハハと過ごすのも人生、テレビを嘲笑してブログに綴るのも人生で、お互いに干渉しないでいきましょうよ、ねえ、おかあちゃん。
杜父魚文庫
7172 テレビを見ればバカになる 平井修一

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