7188 フーサイス小説の世界が中東で繰り広げられている 古沢襄

中東で起こっていることは、謎が多くてフレデリック・フーサイスの小説のようなところがある。一昨年一月、スーダン北部で発生した武器密輸の車列に国籍不明機の空爆がかけれられた事件も結局は分からず仕舞い。中東の衛星テレビ・アルジャリーラのネット映像だけが残っている。
http://www.veoh.com/browse/videos/category/news/watch/v18093929gkDkNCHK
事件は紅海沿岸のスーダン北東部ポートスーダン周辺で起こっている。車列は16~17台のトラックで、ロイター通信は生存者の証言を聞いたスーダン政治家の話として「二機の国籍不明機が車列の上空を通過後、戻ってきて攻撃した」と報じた。ネット映像は破壊されたトラックの残骸が飛び散り、攻撃のものすごさを示している。
スーダン国防相は八〇〇人が死亡とコメントしたが、外相は事件そのものを否定。米ニューヨーク・タイムズは米当局者の話として、武器密輸の阻止を図るイスラエル軍機の空爆だったと伝えたが、イスラエルはコメントを避けた。犠牲者はスーダン人やエチオピア人の39人。
一方、スーダンは「紅海艦隊の米軍機三機が攻撃」と米国の関与を指摘したが、米アフリカ総司令部は否定している。
米CBSによると、イスラエルは武器がスーダンからエジプトを経由してガザに密輸されるとの情報を得て空爆したという。またイランから送られたロケット砲という説もあった。
四年前の九月、イスラエル軍機がシリアの核関連施設を越境爆撃。英デーリー・テレグラフは、北朝鮮の貨物船が韓国の国旗を掲げシリアの港に停泊、陸揚げされた荷物を運び込んだ施設をイスラエル軍機が越境爆撃したと伝えている。
イスラエルのデータ分析家であるロネン・ソロモン氏によれば、北朝鮮に関係する「アル・ハメド号」(1700トン)がシリアのタルトゥース港に現われ、積み荷をおろして行方をくらましたという。
ニューヨーク・タイムズはイスラエルの偵察機が最近、シリア国内の核関連とみられる施設の写真撮影に成功したと伝えていた。(米政府筋情報)またワシントン・ポストは中東専門家の話として、イスラエルがシリア北部の「農業研究施設」を攻撃したとみられると報道。イスラエルはこれをウラン抽出施設とみており、攻撃の三日前に北朝鮮からシリアに核関連機器が輸送されていたと報じた。
これも事実関係が確認されていない。北朝鮮は当然のことながら関与を否定。真相が不明な中、イスラエル非難の声明を出している。
この二つの事件では、米国の偵察衛星による情報がイスラエルに伝わり、イスラエル空軍機が越境爆撃に出たとみるべきであろう。いずれも真相が藪の中で今日に至っている。
エジプトの南部に位置するスーダンは北部がアラブ系バシル政権、南部がキリスト教徒の多い土着農耕民族。中国は南北スーダンに積極的に関与してスーダン石油の権益を握ってきた。エジプト情勢が不安定化して、それがスーダンに影響が及ぶのを怖れている。
日産48万バーレルのスーダン石油の65%の権益をにぎる中国だから、スーダン在住の中国人は登録されているだけで二万四千人に達している。中国の国内ではエジプトの騒擾事件は、一切、報道されていないが、中国政府が強い関心を持っていることだけは確かである。
まさにフレデリック・フーサイスの小説の世界が中東で繰り広げられている。デモ行動の表面だけをみて、単純な中東民主化運動の図式だけで論じていると間違うであろう。一筋縄ではいかない国際政治の裏世界に目配りすることが必要である。そうでないとアルジャリーラのようにムバラク大統領が辞任の大誤報をやらかして、慌てて撤回するはめになる。改革は急がずに着実に進めないと失敗する。
杜父魚文庫

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