7201 オバマ大統領がムバラク辞任を求めるのは危険だ 古森義久

アメリカはいくら超大国とはいえ、エジプトのムバラク大統領に即時辞任を求めることが適切なのか。エジプト国内でいまムバラク政権打倒を叫ぶ勢力は本当に民主主義勢力なのか。
アメリカが長年の同盟パートナーだったムバラク大統領にすぐ辞任を迫るというのは、同盟国や友好国への信義、信頼に反しないのか。
ムバラク政権が倒れた後のエジプトは中東の安定に貢献する新政権をもたらすのか。エジプト情勢に対するアメリカの態度に関しては疑問が山のように提起されます。アメリカ国内でも、オバマ政権内部でも、オバマ大統領のいまの政策への批判が表明されるようになりました。
■「ムバラク氏は協力相手 中東の安定に寄与」 即時辞任要求、米で慎重論
【ワシントン=古森義久】米国のチェイニー前副大統領は6日、エジプトのムバラク大統領が中東で長年、米国の協力相手として地域の安定に寄与してきたこ とを強調し、即時辞任を迫ることへの反対を表明した。
米国の戦略的利益に対するムバラク政権のこれまでの実績を重視し、慎重な対応を求める声がオバマ政権 内で出始めた。
オバマ大統領もムバラク氏の早期辞任の必要性については、慎重な姿勢を示しつつある。 チェイニー氏は6日のレーガン元大統領誕生100年記念関連の演説後、質問に答えて「ムバラク氏は長年、米国のよき友、よき同盟相手だった。その去就には尊敬の意を表する必要がある」と述べた。
その理由として、ムバラク大統領が湾岸戦争でイラクのクウェート侵攻に反対して米国に軍事協力を惜しまなかったことやテロ組織への対応で中東地域の安定に寄与したことを指摘した。
チェイニー氏は「エジプトのことはエジプト国民が決めるべきだ。外部からの過剰な圧力は逆効果を生む」として、オバマ大統領が事実上、公開の場でムバラク氏に辞任を求めたことに対し反対する姿勢を明確にした。
この種の慎重論は政権内部からも表明され、注視されている。大統領が先週、カイロに派遣したウィズナー元駐エジプト大使は帰国後の5日、「ムバラク大統領のリーダーシップ継続はいま致命的に重要であり、(米国は)即時辞任など求めるべきではない」と言明した。エジプト情勢に詳しい同元大使はオバマ大統領からムバラク氏の辞任説得を指示されながらも当面のムバラク政権保持の政策を具申したため周囲を驚かせたという。
日ごろオバマ外交への批判には遠慮のない議会共和党側は今回は「事の重大性に鑑みて米国はひとつの声で意見を述べるべきだ」とし、政権への反対は控えて いる。しかしペイリン前共和党副大統領候補は5日、いまの反ムバラク勢力には穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団の影響が大きいとして、単にムバラク氏を辞任させても混乱が起きるだけだと説明した。
AP通信によると、オバマ大統領は6日、「ムバラク大統領が今後どのような行動を取るかは彼だけが知っていることだ」などと述べ、ムバラク氏への強硬な辞任要求を控える態度を見せ始めた。
クリントン国務長官も同日、ムバラク氏の早期辞任は新政権への移行プロセスに混乱を生じさせる可能性があると指摘するなど、米国がエジプトの内政に干渉している印象を与えないよう、慎重な姿勢を示しつつある。
杜父魚文庫

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