日露関係が険悪化している中でモスクワを訪れた前原外相がロシアのラブロフ外相と11日会談。12日夕までモスクワに滞在するが、メドベージェフ大統領、プーチン首相とは会えそうもない。
9日にロシア政府は北方領土の軍事力を強化する方針を明らかにした。前原訪ロに冷水を浴びせた形だが、極東地域の軍事力を立て直し、北方領土を含む千島列島(ロシア名・クリル諸島)で駐留軍の装備の近代化を図るという。
択捉、国後両島には、ロシア極東軍の第18機関銃砲兵師団3500が駐留しているとみられるが、インタファクス通信によると、ロシア軍筋は機動性の高い自動車化狙撃旅団へ再編成する計画だといわれている。明らかに日本を仮想敵国とみるロシア軍の動きである。
これに対して日本の自衛隊は北海道の守備を九州以南の南西諸島の守備にスウイングさせる動的防衛力の方針を打ち出した。冷戦崩壊によってロシアの脅威が薄れ、むしろ急テンポで軍事力を強化している中国に備えるためである。
それなのにロシアが南クリル諸島(北方領土)の軍備強化を図るのは解せない。この兆しは昨年夏からある。ロシア軍は昨年7月に択捉島で軍事演習を実施したが、上陸した敵対勢力を撃退する作戦を行っている。日本は北方四島の返還を求めているが、自衛隊の軍事力を行使するつもりもないし、またその実力もない。
ロシアが日本による択捉島の上陸作戦を想定して、撃退する軍事演習なんて狂気の沙汰であろう。ソ連崩壊後、弱体化していた極東地域のロシアの軍事力だから、意図的に日本を仮想敵国化して引き締めを図っているとしか思えない。
2013年にもフランスから強襲揚陸艦「ミストラル」2隻を購入して、極東の太平洋艦隊に配備し、南クリル諸島(北方領土)の防衛任務も与えるというのも、その動きなのであろう。
これは勘ぐりかもしれないが、ロシアが南クリル諸島(北方領土)の軍備強化を図るのは、中国との連携プレーの様な気がする。中国にとっては、日本の防衛力が南西諸島の重視型に傾くのは、戦略上好ましいことではない。むしろ北海道に自衛隊を釘付けにしておいて、これまで通り南西諸島は軍備の空白状態にしておく方が好都合である。
菅内閣のことだから、ロシアの強硬な態度に幻惑されて、北海道の防衛力も強化なんていうことになれば、国防力を分散配置することになりかねない。アタフタしないことが肝要ではないか。
杜父魚文庫
7215 中露連携プレーの匂いがする 古沢襄

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