五年前に日ロ文化交流で功績があったとして外務大臣表彰を受けた山田みどりさんが、昨年モスクワから帰国して「日本のお正月を迎えました」とメールを一月に頂戴したのだが、再びモスクワに飛び立った。在モスクワ大使館から頼まれて、「カザフスタン、トルクメニスタン、アルメニアとまた華道文化を伝える旅が始まります」と知らせがあった。
山田さんは七十三歳、「もう年ですので体調だけは整えて頑張ります。残念ながら私の後を継いでくれる人が有りません、この旅はいつ終わるのでしょう」。ご苦労様と申し上げる。三月まで旅が続きバルト3国も回るという。「アルメニアでアララツトのコニャクがおいしいそうですので、時間が有りましたら買つてきます」・・・。
そんな折、2006年の山田さんの「モスクワ便り(トルクメニスタン)」を読んだ読者から「だいぶ前の記事ですが、興味深く読ませていただきました。トルクメニスタンについて関心があります。でも、最近のトルクメニスタンは前に比べていかがでしょうか?お忙しいところすみませんが、御返事お待ちしております。宜しくお願いします」と聞いてきた。最新のトルクメニスタン事情は山田さんが帰国する三月末まで待つしかない。
とは言うものの、やはり気になる。外務省の「トルクメニスタンに対する渡航情報(危険情報)」をみる。
(1)トルクメニスタンは、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン及びカザフスタンと国境を接していることから、これらの国における政治動向やイスラム過激派組織の動向次第では、国内の情勢が不安定化する可能性もあります。
(2)政府による経済改革が進められていますが、失業率が高く、公共料金が値上げされています。このため、経済的困窮を背景とした犯罪増加の可能性があることから注意が必要です。
アフガニスタン国内では、タリバンやアルカイダ等の過激派武装勢力によるテロ活動や外国人を狙った拉致事件が多発しているので、首都アシガバット市でも麻薬密輸グループと治安維持機関との間で銃撃戦が発生していた。
日本の華道文化を伝える山田さんの旅も危険と隣合わせ。花好きのロシア女性を相手にモスクワで日本の華道教授という伝道師の様な仕事を始めたのだが、これが評判になってお弟子さんが増え、遠くサハリンに出向いたこともあった。
ロシアでポピュラーな花はカーネーションとバラだという。寒さに閉ざされる国だからヨーロッパのオランダなどから花を輸入しているが割高なそうだ。「日本から花の輸出ができないの」と聞かれたこともある。
年に一度はロシア女性のお弟子さんたちを連れて帰国し、京都や奈良を見物させて日本文化の美しさを見せている。日本の花の豊かさにロシア女性たちは驚いていたと言っていた。五年前に山田さんが書いた「トルクメニスタンの旅」の紀行文は今読んでも面白い。
トルクメニスタンの旅
お変わりなくお過ごしの事と思います。昨日トルクメニスタンから帰国しました。暖かい国なのですが、けつこう寒い旅になりました。水のない国ですが、世界一の運河があり、空港から町の中央までは近代的な建物で覆われ、すごく綺麗な町でした。
フランスから設計者と技術者を呼び、建てられた物だそうです。いろいろな形の建物で四角い建物に慣れているロシアの風景より美しいものでした。翌日15階の窓からみた風景は一面霧で上には、さんさんと太陽が出ていますのに、下は霧で覆われ、高い建物の頭だけが出ていまして、幻想的な風景に出会いました。
こちらでも大変珍しいとのこと。30年近い独裁者の大統領の下で、旧ソ連時代よりもつといろいろ厳しい制限ガ有る様です。何処にでも大統領の写真が飾られていました。
初めての天皇誕生日をトルクメニスタンで行いましが、各国大使館から祝賀の人が来てくれたのに、トルクメニスタンの要人は石油省と外務省のお役人だけ。日本大使館が招待状を出したのですが、上の許可ガ無いと出席出来ないシステムだそうです。
大統領のバイブルというものがあるそうです。それをお役人は日々唱えているとか。私は会場の舞台造りに協力するのですが、天皇誕生日は日の丸の国旗を何時も立てることにしています。そのスペースを指示していましたら、トルクメニスタンの国旗も立てるとホテルの従業員は言い張るのです。
これはわが国の主催であり、わが国の天皇誕生日であると説明しましても、理解してくれません。今回は報道関係者、経済界関係者、大使館関係者等が一緒でした。人手ガ足りなかつたこともあって、私の裁量で事を運び、一人歩きが自由でしたが、他の人たちはすべて監視つきだったといいます。
石油ガ出て天然ガスがあり、綿花も生産している”豊かな国”の筈ですが、潤うのは上のほうだけのようです。市場を見ましたが、リンゴなど到底食べらるものではありません。5センチ位の青いものが売つていて、乾燥果物やナッツが豊富というの事でしたが、小さい質の良くないものばかりでした。
その点はウズベキスタンの方が果物もナツツも大振りで良いものが、沢山市場に出回っています。トルクメニスタンは砂漠と泥濘の土壌の暑い国ですから、植物は余りよく育たないようです。
国民一人の平均給料は100$位だそうですが、ガスや高熱費はただで、ガソリンも安く、タクシーも1時間140円位、2人でピザとコーヒーを1流ホテルで食べても6$でした。
モスクワのサラダとパンとジュースを普通の町のカフエで注文すると25$、約2800円。それを考えるととても安いと思います。トルクメニスタンの人に言わせると生活は楽だとの事?これも大統領のお陰と言います。そうなのかな?そう言わされているのかな?
まだまだ書きたい事は有りますが、ともかく初めての国の印象です、だいたいほとんどビザは出さない鎖国的な国ですから、あまり外国人が出入りしません。普通は入国は難しい様です。ともかく面白い楽しい仕事でした。それではまた。
杜父魚文庫
7224 七十三歳の華道文化使節の旅 古沢襄

コメント
面白い記事、ありがとうございます。北朝鮮と似た国があるものなのですね。
エジプトの記事、古沢さん のみとうしは、情報の入手の速さと相まって、見事だと、思いました。