エジプト情勢の激変が世界を揺るがせています。ムバラク大統領の辞任の後、エジプトはどうなるのか。展望を占う最大のカギはどんな新政権が生まれるかでしょうが、その際に決定的な役割を演じるのが最大の野党とされるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」です。
この組織は一体なんなのか。日本の一部メディアが伝えるように「穏健派」なのか。あるいはイスラム原理主義に沿った過激な統治を求める組織なのか。この点についてアメリカ側のオバマ政権の心もとない認識が露呈されました。そのことを記事にしました。
■エジプト情勢、米政権の基本認識に乱れ 同胞団を「無宗教組織」
【ワシントン=古森義久】 エジプト情勢を注視するオバマ米政権のクラッパー国家情報長官が10日の議会証言で、イスラム原理主義組織の「ムスリム同胞 団」を「無宗教の組織」と評したことに政権内外から抗議がぶつけられた。
オバマ政権は訂正の声明まで出したが、クラッパー長官の証言はオバマ政権内部のエ ジプト情勢の基本認識の乱れを明示したといえる。
クラッパー長官は「エジプト情勢の米国にとっての意味」などを考える下院外交委員会の公聴会で、議員側からムスリム同胞団の実態について問われ、「ほとんど非宗教の多様なグループで暴力を避けている」と証言した。
ところが現実にはムスリム同胞団はその憲章でもイスラム教の教えを前面に掲げ、イスラム教の国家や政権の樹立を求めている。このため国家情報局は長官の 証言後すぐに「ムスリム同胞団は非宗教組織ではなく、クラッパー長官もそのことは知っている」とする“訂正”を発表した。
またロバート・ミューラーFBI(米連邦捜査局)長官は同日の別の議会証言で「ムスリム同胞団はテロリズムを支援したこともある」と述べ、クラッパー長官の証言を否定した形となった。
政権外でも共和党のマーク・カーク上院議員は「クラッパー長官の描写はムスリム同胞団自身が宣言している活動方針には矛盾しており、現実のその活動は過激だ」と批判した。
外交評議会の研究員で中東情勢に詳しいエリオット・コーエン氏もクラッパー長官の証言を「信じられない」として同長官は責任をとって辞任すべきだとも語った。
ムバラク大統領が辞任した場合、ムスリム同胞団が現在は非合法とはいえ、最大の野党勢力として影響力を強める公算も大きい。米国として、同胞団にどう対応していくのか決める必要に迫られてきているが、オバマ政権は同胞団の正確な実態把握も十分でなかったようだ。
杜父魚文庫
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