「中国は敵だ。25%の報復関税をかけろ」とドナルド・トランプ。次期大統領選挙に出馬の意欲を見せながらCNNで発言に支持が拡がる。
米国の不動産王、ドナルド・トランプがまた人騒がせな発言を繰り出した。2月12日のCNNに出演し、「中国は米国経済を乗っ取った。中国は敵だ。中国は為替を不正に操作しているのだから、米国は中国からの輸入品にどかんと25%の一律報復関税をかけろ」。
そして言った。「そういう決断ができるのは私しかいない」(だから次期大統領選挙に出馬すると示唆した)。『フォーブス』の推定でトランプの資産は20億ドルとされるが、アトランティックシティのカジノ経営が失敗と伝えられ、またサブプライム崩壊のあと、手持ち不動産の評価額が激減し、借入金を膨大な金額に膨らませているとも噂があり、いったい本当のところ、どれほどの資産を保有するかは分からない。
だがアメリカ人庶民には、漠然と『不動産王』といわれるトランプへの期待があるのも事実。半分は虚像とみて良いだろう。
過去にも何回か大統領選挙への意欲を示したことがあり、80年代に二回来日したときも筆者は会ったことがある。チェコのスキー選手だった前夫人と離婚したばかりで逃避行かと報じられ、多くの屈強なボディガードを引き連れてボクシング試合か何かのスポンサーとして宣伝役だった。
その記者会見にでた。NYプラザホテルを買収した直後でもあったので、購買理由を尋ねると「あれはモナリザのようなもの。どうしても欲しかった」と直截な回答があった。
リーマンショック以後、アメリカの不動産をばんばんと買い占める中国人投資家の列は、日本のマンションまとめ買い程度ではなく、全米あちこちに中国人ツアーが出現し、アメリカ人から札束で横面をひっぱたくように値引きして買っている。
だからトランプの「中国は敵」というやや感情的な発言はアメリカ庶民感情をくみとって反中国の情緒につなげた、政治的計算がなされていると推定される。
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◎書評 ブックレビュー しょひょう BOOKREVIEW 書評◎
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黄文雄『それでも、中国は日本を越えることができない!』(ワック)
「中華文明とは、そのコアに宗教のない典型的な暴力文明である」と凄まじい比喩をされる。――うぅーん、シナは暴力文明か。
その理由を文明史家である黄さんは次のように言う。「いかなる大帝国も、ローマ帝国もそうであるように、大モンゴル帝国もそうだった。国家が大きすぎると、文化だけでなく利害関係も多元化になり、政治的な求心力と経済的、あるいは文化的遠心力の対立、葛藤、拡大の中で瓦解していくのだ」
それが中国という国家の宿命だとする黄さんはこうも言われる。
「国家としての統合原理は軍事力が物を言うので、中国にとってはどの時代でも軍は別格な存在である。それは中央集権体制をささえる原理だけでなく、力がすべての世界だから、中華文明のコアに宗教はなく、典型的な暴力文明」あるいは「兵営国家」となるのだ、と。
だから暴力文明は、いずれ別の暴力に滅ぼされるしかないだろうが・・・。
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読者の声 どくしゃのこえ DOKUSHANOKOE ドクシャノコエ
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(読者の声1)エジプトの「ファラオ」ムバラク大統領が辞任しましたが、1981年に故サダト大統領が暗殺された時点でイスラエルとエジプトの平和条約が以降30年も続くと誰が考えただろう。
当時、アラブ世界で完全孤立したエジプトがまた中に復帰して再び影響力を持つと誰が予想しただろう。何だかんだ言ってもムバラクは中東の安定に誰よりも寄与したのです。これだけはきちんと評価されるべきです。
さて、前回エジプトの人口爆発に触れましたが、イスラム教徒全体の人口が既に20億人に達しているという説もあります。因みにイランの人口は1979年の革命時には2300万人に過ぎなかったが、現在8000万人を突破する勢い。こうなると、どんな政治体制でも国民を養っていけない。
イスラム原理主義となどは単なる苦し紛れで根本的なイスラム社会の問題解決にはならない。実際にエジプト野党で最も組織されているムスリム同胞団内で穏健派は米国の援助の重要さを理解して、イスラエルとの和平条約は尊重すると言っている。もしも、エジプトの新政権が国民にパンを食わせなかったらすぐに再革命となるだろう。
尤も現時点では、(軍人の)ムバラクやスレイマン将軍が軍組織に権力委譲しただけ。エジプトではどんな政治勢力も軍に睨まれたら終わりです。
ところで、アラブ諸国の民衆は中東革命の最大のプレーヤーであるアル・ジャジーラに煽られているが、シリアで数百人が逮捕された。
さぞかし痛い目に遭っている事でしょう。またインターネットで見たイスラエルのテレビニュースによるとイスラエル国内のアラブ人がムバラク辞任歓迎のデモをハイファで、ナザレで、三角地帯で行った。
主にアラブ民族主義のバラッド党に所属する彼らは汎アラブ主義者のナセルの写真を掲げた。一口にアラブ人と言ってもそれぞれ違う夢を見ている。
http://www.haaretz.com/print-edition/news/israeli-arabs-call-for-a-democratic-mideast-in-wake-of-mubarak-ouster-1.343018
さて怪しいのがロシアの動きで、ロシア外相ラブロフはどさくさに紛れて「これ以上イランに厳しい制裁をしない」と発表。
イスラエルのテレビ解説者は「彼らは意味が解ってやっている訳ですね」「はい」と厳しい国際社会の生存競争。ロシアは自国の存在証明の為に政治をする。それで、もう一方の大国のオバマ米国大統領は「意味が解らずに」政治をやっているような気がして怖い。(道楽Q)
(宮崎正弘のコメント)最後の文節にあるご指摘、「ロシアは自国の存在証明の為に政治をする。それで、もう一方の大国のオバマ米国大統領は『意味が解らずに』政治をやっている」。まさに本質を突かれていますね。
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(読者の声2)前号にでたドイツ文化に関しての書評がありましたね。ドイツは二回行きました。一度目はレンタカーのルノーでフランクフルトからパリへ。二度目は、ライプチヒ、ベルリン、ドレスデン・・。
そうですね、ドレスデンからの電車が遅れに遅れて、ベルギー行き寝台車に乗れなかった。車掌は“ベルギー行きはもう出た”と言うだけ。
“カネ返せ”と窓口に行ったら、寝台券は返さない規則だったり。だが、「苦情デスク」がベルリン駅の東西両口のど真ん中にある。そこには怒鳴り声の男と3人の警官がいた。係りの女性は、優しくライプチヒ行きの切符をその返さない寝台券の代わりにくれたのです。
ま、ドイツ人特有の「頑固に謝らない」はありますね。それと、アングロサクソンの大らかさがなく、ドイツ女は脇が硬い。そこは、ユダヤ女性も英国女性も大らかです。(伊勢ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)川口マーン恵美さんには『ドレスデン逍遙』というスグレモノのルポルタージュもあります。
杜父魚文庫
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