エジプトの結末、これは何だ? 軍事クーデタと変わりないじゃん。議会解散、憲法停止、残務整理暫定内閣で六ヶ月以内に改憲、大統領選挙???
エジプト陸軍最高評議会は12日、議会を解散し、憲法を停止すると発表した。
しかもムバラク大統領が最後に指名していった暫定のシャフィク内閣を当面活かし、残務整理にあたらせる。秋までに改憲の是非をめぐる国民投票を実施し、大統領選挙を実施する。
「締結した外国との条約はすべて遵守する」と継続性を協調したことは諸外国へ安堵感をあたえた。
当面、暫定厳守はタンタウィ国防相があたる。えっ? あの「ムバラクのプードル」と言われた人物、しかも75歳。NYタイムズははやくもスレーマン副大統領を「前副大統領」と呼んでいる(同紙、2月14日。電子版)。これが民主化のプロセス。
とりわけ騒擾の悪影響をもろに被ったのはエジプトのGDPの11%を占める観光業(全就労人口の10%)、中央銀行は当座7億ポンドの国債を発行して急場をしのぐ方針という。
スレーマン副大統領は完全に宙に浮いた形、しかも欧米の一部が期待したエルバラダイ元IAEA事務総長は影響力無しとみて、どこかへ消えた。
ムバラクを宮殿から追い出した抗議デモの主役は、イスラム原理主義過激派ではなくフェイスブックによる若者、学生が主役。「いずれも無名の英雄たち」(ウォールストリートジャーナル)。
だがいずれも軍によってタハヒール広場から排除され、抗議した活動家は拘束されている。市民の中には軍政に不安がる意見が多い。
悔し紛れにか、過激派はザワヒリ(アルカィーダ幹部)の言葉を思い出しているそうな。「近敵はムバラク、遠敵は米国」。しかし彼らは結局、ムバラク打倒を実現できなかった。
イスラム原理主義過激派の一部はムバラク独裁を「natMsm」(ナチズムとM<ムバラク>を重ねた)と揶揄した。
▼エジプト軍も腐敗しているが「政治刷新」の主体たりうるだろうか
これがエジプト政変の結末だろうか?いや、第三幕があるのか。
もし、これで落ち着くとすれば、議会解散、憲法停止は事実上の軍事クーデタが成功したことを意味するものであり、しかもエジプト版の二・二六事件にほかならないのではないか。
議会解散の合法性もなければ、いったいどういうレジティマシーに基づいて憲法を停止できるのか。唯一、軍事クーデターでしか、できないではないか。
同日、数百のデモはタハヒール広場に残存したが、行われたデモは警察2000名の賃上げ、待遇改善デモである。内務省ビルまで更新し、警戒中の軍隊は空砲を撃ったが、解散を命じなかった。
国立博物館から消えてなくなったファラオ、ツタンカーメンなど17の国宝の行方は依然として不明だが、同様にして「民主化」も行方不明になりそうでは?
杜父魚文庫
7235 「近敵はムバラク、遠敵は米国」 宮崎正弘

コメント