7252 イラク北部にもチャイナタウンが出現 宮崎正弘

さすがは新華僑。その積極的海外進出はイラク北部にもチャイナタウンを出現。クルド族自治区の石油埋蔵を狙って大ショッピングモールはモスクの真ん前。
イラク戦争は前期と後期に別れる。パパ・ブッシュ時代の湾岸戦争は主戦場がクエートからイラク南部だった。爾後、クルド族が生活するイラク北部には飛行制限区域が設けられ、イラク空軍はクルド族がすむ地区への攻撃を控えた。
山岳地帯で町はすくなく集落もとびとびの地勢だから攻撃するのも難しいが、ともかく戦災を免れたのだ。
クルド族はイラク北部からトルコ東部、そしてイラン北西部にまたがり、推定700万ほどの人口がいるとされるが、山岳地帯と荒野。ドイツが戦後労働人口として移民を促進したトルコ系は、殆どがクルドと言われる。トルコ政府、イラン政府は独立を叫ぶクルド族を弾圧している。
さて後期イラク戦争は独裁者=サダム・フセインを追っ払い、「民主化」の名の下に米軍が駐留したため、イラク各地では反米、反政府ゲリラ、自爆テロとの戦いがあり、ようやく安定に向かってイラクは鉱区開発を急ぎつつある。
バグダッドと近郊都市はまだまだ自爆テロが続発し、安定は遠い。
だが中国人ビジネスマンは、そこにビジネスチャンスがあれば、戦争も紛争もテロも怖くない。日本人とはまったくメンタリティが異なる。
イラク北部の町スライマニア市は人口75万。クルド族自治区第二の都会である。付近の原油埋蔵は250億バーレル、IMFはことしのイラクGDP成長は11%を越えると見積もっている。
投資が収集し始めた。ドイツ、イタリア勢にくわえてバーレーンなどUAE諸国。この列に韓国、そして中国が加わった。1200社近くが、イラク復興ブームに便乗する。
▼しかし文化摩擦を惹起しないか?
スライマニア市のど真ん中に敬虔なムスリムのためのモスクがあり、広場を挟んだ対面に新築ぴかぴかのショッピングモールが完成。入り口は龍の置物が二つ。そう、中華の象徴である。チャイナタウンが出現したのだ!
クルド族自治区の多くは戦争中、空爆から免れ、またテロの犠牲も少なく、そのうえ自治政府は外国からの投資に優遇措置を執った。十年免税、新規投資歓迎、100%現地法人可能など。
するとどうだろう。中国各地から陸続とやってきた中国人らはレストラン、小売り、コンビニ、雑貨屋を開店した。2011年1月現在、登録された華僑はおよそ500名、年内に倍増する勢い。
しかしイスラム伝統、クルド族のしきたりと真っ逆さまに異なる中華伝統は奇異であり、地元の反発も強いと現地を取材したアルジャジーラは中間報告のルポ(2月16日)。
新華僑への毀誉褒貶はともかくとして、この逞しさとメンタル・タフネス、日本の若者は真似ができるか?
杜父魚文庫

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