7299 カダフィ体制の崩壊は秒読み 宮崎正弘

カダフィの四十一年は悪夢の連続だったか? リビア部族政治独裁に幕。ベネズエラがカダフィの亡命を受け入れる? 反乱軍相手に死ぬ覚悟はないのか?
中東の番犬、狂気の指導者といわれたカダフィのリビア。イスラム法学者は彼への銃撃命令を出した。カダフィの四十一年にわたる狂気の独裁は崩壊の秒読みとなった。
英米情報部によればパンナム爆破事件の黒幕。日本赤軍はじめ、数々のテロ事件を支援したカダフィは夥しい奇行でも知られた。外国を訪問してもテントで暮らした。ウクライナの美女を四人いつも側に侍らせていた。
レーガン政権のときに住んでいたテントを米軍に空爆されて、一瞬おとなしくなり、さらに2003年のイラクのフセイン政権崩壊を目撃してからは突如、米国と関係改善に乗り出した。条件はリビア石油開発だった。
とはいえ欧米の呼びかけた自由化、民主化には貸す耳を持たず、リビア国内マスコミはカダフィ礼賛一色。あまつさえカダフィの個人崇拝を強要するテレビ番組作りなどは北朝鮮に酷似した強権支配政治だった。一方で縁故主義と同じ部族優遇政策は、リビア社会を構成する他の部族の反感を誘っていた。
砂漠の国=リビアは所詮、部族のいがみ合い、対立、合従連衡の世界である。
エジプト崩壊直後から、民主化要求の嵐はリビア各地に吹き荒れ、カダフィは軍隊に初期のデモ段階から躊躇なく実弾使用を命令、また評判の悪いカダフィの次男=サイフルイスラムが2月21日にテレビ演説を行い、「最後の銃弾一発まで戦う」と宣言した。
「リビアは内戦の危機にある。首長国や小国家を作る陰謀が存在する」と次男は言い放ち、政権延命のためには自らの失政を他者へすりかえて、責任転嫁をこころみた。かえって郡内の反感を生んだようだ。
2月19日、リビア第二の都市ベンガジでは銃撃された犠牲者の葬儀に参加していた住民数千人に向かってカダフィの治安部隊が発砲し、またデモ隊に片っ端から銃撃した。
デモ隊と治安部隊の衝突で住民200人、北東部デルナで50人の合計250人前後が死亡した。これは「中東の天安門事件」である。この衝撃が及ぶ範囲は中東・北アフリカにとどまらないだろう。
▼土壇場で反旗が翻って。。。
国連代表部にいるリビア代表も立ち上がる。2月21日、ニューヨーク国連本部で会見したダバシ次席大使は「現在リビアで行われていることは人道犯罪であり、戦争犯罪だ」とカダフィ退陣を要求した。「これはリビア国民に対する虐殺である」とし、カダフィは、直ちに退陣して国外に去るよう要求した。
軍内に異変がおきた。軍は国民に発砲したが、それに衝撃をうけた一部の軍人が民衆の側へ寝返り、空軍パイロットのふたりが空爆を拒否して、マルタへ亡命するなど、軍に地震のような動揺が起きた。
 
カダフィ政権への徹底抗戦を主唱した第二の都市、ベンガジはムスラタ族など諸部族が街の支配権を握った。また東部一帯を支配するズワイヤ族も欧州への石油輸出をとめる動きがでた。
 
アルジャジーラ(2月22日)が報じたところに拠ればリビア軍将校団は声明を出し、兵士に対し最高指導者カダフィ大佐を排除するため、民衆に合流を呼び掛けた。カダフィ体制の崩壊は秒読みに入った。この事実経過が本当だとすれば、軍のクーデタである。
スンニ派のイスラム法学者カラダウィ師は「(カダフィ大佐を)リビアから排除するためリビア軍兵士は大佐を銃撃すべきだ」というファトワ(法的見解)を示した。
カダフィは逃げるか、それとも最後の決戦を挑んで壮烈に死ぬか。それは美意識の問題だろう。
杜父魚文庫

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