7311 書評 櫻井よしこ『日本の宰相』 宮崎正弘

稀代の論客、女性ジャーナリストの最先端を走る櫻井さん、今年度の正論大賞受賞。じつは評者(宮崎)は、櫻井さんの著作を読むのはこれが初めて。大概は『週刊新潮』のコラムなどで読んでいるので、いつも訴えに共鳴したきた。
単行本にまとまったものを最初から終わりまで読みおえた率直な感想とは、壮烈にして辛辣にして、しかもまったくぶれない思想スタンスで貫かれているという驚きだった。
本書は菅、鳩山、麻生、福田、安倍、小泉の歴代首相を批判しつつ、しかしありきたりの論評や政局を論じる政治評論家とは異なって、その思想信条の確かさという視点からおこなうから、櫻井さんの放つ矢は相手をぐさりと突き通す。安倍、小泉、麻生の順で評が高いとはいえ、靖国参拝でスタンスを替えなかった小泉首相への評価がやや高くなるのも、やむを得ない仕儀だろう。
とはいえ、最初に偉大な指導者として列挙しているのはチャーチル、ニクソン、岸信介であり、かれらこそは「宰相」に値する政治かであり、比べると民主党の政治家など『論ずるに値しない』と斬って捨てる箇所も愉快なほど辛辣である。
通読後、満腔の賛意を表したいとおもった。チャーチルは同世代人ではないけれど、ヤルタ会談で滞在した黒海の別荘地の宮殿をみにクリミア半島まで行った。ニクソンは世界戦略の壮大さと、そのストラテジーに惹かれ、一冊を翻訳し(『リアルピース』)、さらにNYへ会いに行った。このときニクソンと独占インタビューをしたが、日本は巨大なインポテンツだと明言した。
岸信介は政界引退後、何度かお目にかかった。たがニクソンに会ったときの身体の震え、興奮はなかった。以上は評者の蛇足。
杜父魚文庫

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