自分の進退は菅首相にお任せすると述べていた前原外相だったが、首相から慰留されても、むしろ辞意が固かったことが浮き彫りになった。外務省で行われた辞任の記者会見でも「辞任の真相は暴力団のフロント企業からの献金ではないか」と厳しい質問が飛んだ。
後任の外相人事についてはまだ決まっていない。それだけ前原外相の辞任は官邸サイドにとっては唐突観があったのではないか。
<前原誠司外相は6日夜、首相公邸で菅直人首相と会い、政治資金規正法が禁止する外国人からの政治献金を受け取っていた責任を取り、辞任の意向を伝えた。首相は慰留したが、前原氏の辞意は固く、首相も最終的に了承した。「政治とカネ」の不祥事による主要閣僚の辞任は、逆風下の首相にとって深刻な打撃となる。
首相が掲げてきた「クリーンな政治」にも傷がつき、政権維持が一段と困難になるのは必至だ。「ポスト菅」の有力候補だった前原氏の辞任で、民主党に対する世論の不信が強まることも避けられない。
前原氏は首相との会談後、外務省で記者会見し、辞任の理由について「一両日、熟慮を重ねた。事実認識はなくても、外相が外国人から献金を受けた事実は重く受け止めざるを得ない。けじめをつける」と説明。「職にとどまることで内外の国政の課題が滞ることは避けなければならない」と述べ、国会審議への影響も考慮したことを明らかにした。
前原氏と首相との会談は約1時間45分に及んだ。途中から枝野幸男、福山哲郎正副官房長官が加わった。会談後、首相は枝野、福山両氏と首相官邸で今後の対応を協議した。前原氏の後任について、民主党内では松本剛明外務副大臣らの名前が挙がっている。
前原氏は、4日の参院予算委員会で、京都市内の在日韓国人の女性から、4年間で計20万円の献金を受けたと指摘された。前原氏は会見で、調査の結果、2005~08年と10年に各5万円、計25万円を受け取っていたことを明らかにした。(時事)>
<前原誠司外相の6日夜の外務省での記者会見のうち、外相辞任関連部分の要旨は次の通り。
「一両日熟慮を重ねた結果、外相の職を辞することにした。菅直人首相に了解してもらった。6カ月足らずで職を辞することになったことと、クリーンな政治を目指してきたのにもかかわらず政治とカネの問題で不信を招いたことを国民におわびする」
「指摘を受けた在日外国人の方とは長年親しく付き合っていた。政治を志した時点からずっと支援してもらった。この問題が発覚するまで献金してもらっていた事実を知らなかった。献金によって外相の職務に影響を受けたことはない。ただ、外国人から献金を受けていたことは重い。疑心暗鬼が日本外交を揺るがせることになれば、本意ではない。政治資金の管理責任は私自身にある。政治家としてのけじめをつけるべきだ」
「2005~08年と、10年にも受領していた。金額は各5万円。03年以前は、政治資金収支報告書の保存期間を過ぎているので不明だ。そのほかの外国人から献金を受けたかも調べているが、全体像の把握には時間がかかる」
――菅首相からは。
「私から、国民や国会審議に迷惑をかけて申し訳ないと話した。慰留してもらったが最終的に了解してもらった」
――外相辞任で菅政権はさらに厳しくなる。
「外交空白が起きるよりも早くけじめをつける方が、菅政権のためでなく、国民のためにプラスになると判断した」
――辞任の真相は暴力団のフロント企業からの献金ではないかとも言われている。
「国会でも答弁したように全く知らなかった。やましいことは全くない」
――外交のトップが次々と交代することに疑問を投げかけていたはずだ。
「外交は継続性が大事だし、首相や外相が各国の首脳や外相と人間関係を作るのは極めて大事だ。国益を損ねることを自らしてしまった」
「普天間問題に大きな影響が出ないことを望んでいる。今まで通りの方針でやってもらえると思う。今後は与党の一員としてしっかりとサポートしたい」(朝日)>
杜父魚文庫
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