7379 「スペイン内戦」の状況に酷似してきたリビア状勢 宮崎正弘

ベンガジの国民評議会をフランスが賛成、EUは飛行禁止区域設定へ前向き。フランスでサルコジ大統領の不人気、ついに人気投票ではルペンが第一位についた。
マリーヌ・ルペンは国民戦線(FN)の新党首。父親ジャンマリ・ルペンの後継として党首になったばかりだが、その政治力はなかなかのものがあり、世論調査で23%の「得票」。サルコジ現職大統領は21%、オブリ社会党書記も21%となった。
フランスでも愛国ナショナリズムが復活している。
 
フランスは西側で飛び抜けた外交攻勢にでた。リビア東部ベンガジにうまれた国民評議会に「賛意」を表明したのだ(3月5日)。一方、英国国防省もフォックス国防相が会見したところによれば、ベンガジに英国外交チームが派遣されたと言う(ヘラルドトリビューン、3月7日)。
リビアは事実上の内戦に発展しており、3月5日に第二の都市=ベンガジに結成をみた「国民評議会」は前法務大臣が議長。元インド大使らも加わった。
早速にも欧米に空爆支援を要請した。フランスはとりあえず「飛行禁止区域」設定に前向き。しかし飛行禁止区域となると米空母二隻を投入せざるを得ない米国は消極的。ロシア、中国は反対である。いまのところ、トリポリへの兵站補給路を断つという臨検などの措置がなされる可能性は検討の対象だろうけれども。
さらにベンガジの国民評議会は内部に危機管理委員会を設置し、議長のアブドルジャリレ元法相は、元インド大使のエルウィをEUに派遣し、11日のEU首脳会議でのリビア支援策具体案を提示する模様。
しかし国際法的には各国が、このベンガジ政権を外交承認するまで、合法性がない。リビアの「国民評議会」は反カダフィで結束する反政府武装勢力の協議機関ていどの位置づけになる。
そのため欧米が空爆支援などという軍事協力はできる筈がない。ベンガジを「自由リビア」(仮称)として承認し、大多数が国連に迎え入れ、正式に国家として国際社会が承認すれば、国連決議による多国籍軍の派遣があるだろう。
あるいは少数の国家が、早急にベンガジを承認し、安保条約を締結し、それにより軍事力覇権というシナリオとなる。
▼リビア版フライングタイガー作戦?
現段階では、スペイン内戦のように国際的な「志願兵」を募るか、あるいは米軍が「志願」を仮装して「フライングタイガー」という本当は正規の米空軍をボランティアと偽ってシナに派遣したように、リビア版フライングタイガーの遂行だろうか。
だがカダフィ大佐が立てこもるトリポリ政権は軍事力で圧倒的である。
リビア空軍は戦闘機364機、武装ヘリコプターが136機。くわえて216基の地対空ミサイルを装備し、空軍は18000,陸軍は五万でソビエト戦車200両を保持する上、マスタードガスが9・5トン。
6日、カダフィ軍は反政府勢力が陥落させたという近郊都市に空爆、戦車隊を投入して猛攻を加え、さらに中間の海岸都市へも空軍の反撃が加えられたとの報道がある。
ザーウィヤは一般住宅地にまで砲撃が加えられ無差別攻撃に多くが死傷したほか、反政府部隊はカダフィの生まれ故郷シルトへ進撃中だという。
とはいうもののトラックに機関砲を搭載し、せいぜいがカラシニコフ銃で武装する反政府軍は、装備ならびに訓練度で劣る。弾薬も不足しており、カダフィ軍とは雲泥の差。リビア内戦は長期化する懼れもある。
ヘミングウェイやアンドレマルローは志願兵を率いてスペイン内戦に志願し、戦った。おなじ状況が21世紀の世界に再現されるか?
杜父魚文庫

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