7428 天災への日本人の身の処し方 古森義久

東日本大震災の惨禍はますます規模が広がっています。というよりも損害の激しさが判明しているというほうが正確でしょう。
こうした天災へのわが日本国民の対応のしかたがアメリカのメディアから驚きに近い賞賛の評価を得ていることはすでに書きました。
その際に16年前の阪神淡路大震災でも日本人の冷静な対応へのアメリカ側のいぶかり、驚き、礼賛などがあったことをちらりと触れました。
ところが産経新聞3月14日朝刊一面のコラム「産経抄」が私のその点での体験についてちらりと書いていることに気づきました。当時も阪神の被災者の方々が未曾有の大災害に対し、取り乱さず、粛々と、処していたことがアメリカのジャーナリストたちの関心をしっかりととらえたのでした。そしてその点を当時、ワシントンにいた私がCNNのニュース番組に招かれ、質問されたのです。私に質問を浴びせてきたのはジュディ・ウッドロフという女性記者でした。
そしていままた日本人のその特性がアメリカで話題となりました。
ただし今回の大震災では一部には商店からの盗みなどという行為も起きてはいるようです。でもそれはあくまで例外的な少数ケースでしょう。
阪神大震災が起こったとき、米国に滞在していた。故郷、神戸の炎上を映し出すテレビ画面を、ただ惚(ほう)けたように見つめていた記憶がある。CNNテレビに、小紙ワシントン総局の古森義久記者が招かれ、キャスターの質問に答えていた。
▼「なぜ、日本人はこれほどの惨事のなかで、暴動も略奪もなく、冷静、沈着に行動できるのですか」。古森記者がどのように説明したのか、忘れてしまった。小欄なら、「日本人だから」としか、答えようがない。
▼マグニチュード9・0という世界最大級の東日本大震災に見舞われた日本に、世界の耳目が再び集まっている。ある中国紙は、「多くの中国人が、地震発生後の日本人の秩序ある行動に敬服している」と伝えたという。
▼一方で、福島第1原発の爆発には、一様に衝撃を受けたもようだ。各国のメディアは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や米スリーマイル島原発事故を引き 合いに出して、報じている。東京電力は、廃炉も覚悟の上で、海水を満たす非常手段に踏み切った。世界最高水準の日本の原子力技術が、事故による放射能漏れ を最小限に抑える面でも、発揮されることを期待したい。
▼ただ政府の対応ははなはだ心もとない。爆発の事実を発表したのは、2時間以上たってからだった。退避指示の範囲を徐々に広げるのは、かえって周辺住民 の不安を募らせるばかりだ。12日朝の菅直人首相の現地視察が、現場の作業を遅らせた原因のひとつとすれば、何をか言わんや、である。
▼有史以来、地球上で起きた大地震の2割が、日本列島を襲ったといわれる。日本人は過酷な宿命を受け入れつつも、立ち向かってきた。その真価が試されている。
杜父魚文庫

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