タバコを買いに朝、近くのファミリーマートに行ったが食品の棚は見事に何もない。そこに食パンが7個置いてあった。
顔見知りの店員が「松戸工場から来たばかりなのよ」と教えてくれる。彼女は「お風呂に入る度に東北の人たちに、ご免ね!と祈るのよ」。私が東北に縁があると知っていたのだろう。そんな思いやりの言葉が嬉しい。日本人には、そういう優しさがある。
7個を全部買って、近所の人に分けてあげることも考えたが、それは出来なかった。偶然の僥倖を一人占めは憚られる。次の人が喜ぶ僥倖を奪ってはいけない。私たち昭和ヒトケタの世代は、そういう道徳律を今でも失っていない。どん欲なシナ人とは違うという自負がある。
四日ぶりに買った一斤の食パンは嬉しい。何しろこの三日間は前夜のご飯の残りでお粥をたいいて朝食を済ませていたのだから・・・。でも被災地で凍えている人たちに較べれば、まさに天国。それにしても大災害から五日もたったというのに、被災地に対する支援が遅々として進まない。米も水も、灯油すら尽きようとしている。これは天災というよりは人災なのではないか。
杜父魚文庫
7436 四日ぶりに買った一斤の食パン 古沢襄

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