7477 3月19日のリビアにおける戦闘  宮崎正弘

欧米の戦艦は地中海に25隻。このうち英国の潜水艦からミサイルが、米海軍潜水艦と駆逐艦からトマホーク・ミサイル。合計112発がリビアの軍事施設へ向けて発射された。
国連決議から殆ど時間をおかずに軍事行動に踏み切ったのは、迅速な準備態勢が整っており、軍は命令を待つだけだったからだろう。
とはいえ米艦は空母一隻が地中海を離れてアラビア海へ移動しており、また日本の大地震発生以後、米艦おそよ三十隻は日本の沖合にいる。
この米軍の陣容の劣勢をフランスと英国がカバーし、英国はキプロスとイタリア空軍基地に戦闘機を配備、フランスはコルシカ島にミラージュ戦闘機などを配備し、空母シャルル・ドゴールを出航させる。
 
また巴里で開催された緊急会議にはアラブ連盟から多数の出席があり、22ヶ国代表が軍事介入を肯定した。カタール、UAEならびにサウジアラビアは軍事力行使に協力する。
ドイツが棄権票を投じながらも会議にメルケル首相自らが出席したことは特筆されて良い。「国連決議」の主目的は「民間人を守る」という保護者の論理、所謂「保護者の責任」というルールに叶っていると欧米列強は認識しての行動開始となった。
だが、この欧米の変身も、マキャベリ的で、或る意味では見事である。反カダフィ勢力のおさえるベンガジ周辺など東部の石油利権を保護するというリアルな目的も心底にはあるわけで、イタリアが軍事関与では後方支援しかしていない理由は、リビア石油の70%をイタリアが輸入しているからだ。
カダフィはイタリアを数度、訪問しており、ベルルスコーニ首相とはじつに十一回も会っている。
英国、フランスはそれぞれがリビア油田の利権をもっており、カダフィとは旧知の間柄で、にもかかわらずの介入には、それなりの決断が必要だった。
杜父魚文庫

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