7486 中国の対日方針、急激な穏和路線は戦術か真実か? 宮崎正弘

62メートルのアーム装備ポンプ車を無償提供。昨秋の尖閣衝突事件以来、氷河期のように冷え込んだ日中関係。いまが方針転換のチャンスとみたのか、中国は支援拡大に踏み切る。日本に於ける対中イメージの改善をねらっての措置は明らかである。
この中国の対日方針、急激な穏和路線は戦術か真実か?
こんどは中国の消防車メーカーが、62メートルのアーム装備ポンプ車を無償提供すると言いだし、22日に上海港を出港するという発表がなされた。
中国社会科学院日本研究所の馮昭奎研究員ら学者およそ百名は3月16日に中国共産党機関紙『人民日報』系列の『環球時報』に連名で寄稿し、「日本に温かい支援の手を差し伸べよう」とする声明を発表した。
同声明は「2008年の四川大地震の際、日本による救援活動や一般民衆が募金してくれた感動的な場面を私たちは忘れることはできない」と訴えた。昨秋の尖閣諸島での中国漁船衝突事件に際して、「円買いによって円高を誘導する」と懲りない対日制裁を豪語していた馮昭奎研究員ら強硬派が連署した知識人のなかに含まれていた。
同様に台湾にも中華思想に染まった対日強硬派がいるが、そのひとり、南方朔(本名・王杏慶)は『中国時報』(3月15日)コラムで、日本国民や各界の対応を絶賛していることが分かった。
南はこう書いた。「武士道精神の日本が災難に打ち負かされることはない」。「超大地震と津波に見舞われた日本で(米ニューヨーク大停電やカトリーナ災害時のような)商店への略奪事件も起こらず、あらゆる方面に秩序が保たれている」。「日本独特の栄誉を重んじ、恥を知り、礼を重んずる特性」の原点は新渡戸稲造が残した武士道精神にある、と李登輝総統と同じことを言い出した。そもそも『中国時報』は一番の親中派紙で、南方朔は「保釣(尖閣諸島防衛)」の強固な支持者である。
ところが一方で、「大震災に混乱に乗じ、尖閣奪取を、いまこそ中国の「好機」と香港紙『東方日報』(3月19日)が獅子吼した。
「日本が強い時、中国は手出しができず、日本が弱っても手を出そうとしないのであれば、釣魚島はいつ取り戻せるのか」と、おもに中国外交の弱腰と突く微妙なスタイルで書かれている。 しかし香港全体では日本への支援ムードが市民のあいだに拡大しつつあり、同誌の主張を肯定する人は少ない。
杜父魚文庫

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