出荷規制だの摂取規制だのと矢継ぎ早に首相指示が打ち出されている。農家にはたまったものではない。最終的には補償されるにしても、風評被害はこれを大きく上回るだろう。
飲食してもただちに健康を害することはないと枝野官房長官は冷静な対応をくり返す。口にしたらあぶないというものは、いままでひとつもない。野菜にしても牛乳も水道もそうである。
それなのに、飲食を控えるようにというのは、どういうことか。放射線の測定値が基準を上回れば、次から次に規制食品が指定される。
要は1年間、毎日、大量に口にしていたら健康被害が出る可能性がある、というぐらいの話ばかりである。ならば、その通りの対応を取ればいい、片っぱしから出荷規制だ、摂取規制だとやるからパニックになる。
原子力災害対策特別措置法に基づく首相指示だ。1か所で出ればその県全体に規制の網がかぶせられる。
この暫定基準というのがくせものだ。食品衛生法では決まっていなかった。それをこの原発事故によって、厚生労働省がばたばたと決めた。
申し訳ないが、この省のやることは年金問題にしろ、無責任きわまりないことがやたらと多い。暫定基準も国際的な数値をそのまま引用してきて、日本独自の食習慣などはまったく考慮せずに決めたらしい。
だから、やたらときつい数字になった。その方が役所としては責任を逃れられる。
ようやく、これでいいのかと基準値を見なおす作業が始まったようだが、これだけの風評被害、大パニックを起こしてしまったあとで、これを修正しようとしてもうまくいくはずがない。国民の不信感が高まるだけだ。
<<作業着姿はやめてほしい>>
ある経済研究所の理事会が開かれて出席してきた。大学の先生たちが多いから、懇談では、こんな話がメインになった。留学生たちが次々に帰国しているのだ。アジア各国などが多い。
いったん帰ってしまうと、国によっては就学ビザを出さないところが多い。日本はあぶないからやめなさいというのである。
これは筆者も身近で経験している。大学院修士課程に合格して、100万円を超える入学金・授業料も支払った留学生が、新学期開始まで帰国していて、入学取り消しを求めてきた。
その国の当局が日本への出国を認めないというのだ。自国民保護ということか。
そんな話をかわしていて、一人の教授が「菅首相以下、作業着を着ているがあれだけはやめてほしい」と提言した。
閣僚たちがあの姿でずらっと並び、深刻な顔で協議している映像が各国で何度も繰り返して流されると、日本はとんでもない事態になっていると見られてしまうというのだ。
日本中が放射能で汚染されているかのようなイメージを与えてしまう。
あの作業着というかジャンパーというか、似合う人はほとんどいないが、あれはポーズだけである。現地で陣頭指揮にあたる場合はあの姿もいいだろうが、東京の首相官邸で作業着姿だと、異様に見えるのだろう。
普通のスーツ姿でいいではないか。現地に行くときは着替えればいいのだから。外国に余計な詮索を与えるのはきわめてよろしくない。
杜父魚文庫
7513 害がないのに規制するのはパニックを生むだけ 花岡信昭

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