7521 店先から消えた水戸納豆 古沢襄

水戸納豆が店先から姿を消した。関西では納豆は食べないが、東北や関東では朝食に納豆が欠かせない。朝食のパンと納豆が意外と合う。ノリと生タマゴ、一口納豆は和食の定番である。米は東北の秋田こまち、味噌汁は信州味噌とくると、たまらなく嬉しい。ささやかな庶民の楽しみである。
茨城県が納豆の名産地なのだが、メーカーが東日本大震災で製造機が壊れて、製造中止に追い込まれ、首都圏で品薄になっているというので、西友やイオンを覗いたら見事に納豆がない。
戦時中にも納豆がなくなった。信州では納豆菌のついたワラの上に大豆を置いて、それをコタツの中でじっくりと温めると、納豆特有のネバネバが出てくる。家庭でも納豆を作ったものである。
毎日新聞によると、茨城県のメーカーは震災に伴う停電で、製造中だった数万食分を廃棄したという。納豆は18~20時間発酵させた後、5度以下で最低でも24時間冷却して作るので、2日以上電気が必要となる。取引先である仙台市内の工場が被災し、パックを覆うフィルムの仕入れも止まった。
最近の納豆の作り方は、大量生産に伴ってずいぶんと変わってきている。納豆菌のついたワラの上に大豆を置いてコタツで温めて作る家庭などは、いまどきないのであろう。
停電騒ぎも修まり、壊れた製造機の修理も終わったので、そろそろ店先に納豆が並ぶそうだ。だがフル生産に戻るのは当分先、水戸納豆のフアンはまだ待たねばならない。
杜父魚文庫

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