「3・11」から2週間。被災地の多くの避難所は依然としてガソリンや食糧、水などあらゆるものが不足している。
避難してからの死者も増えた。改めて指摘しなくてはならないが、「3・11」の巨大地震と巨大津波の死者は天災によるが、その後の死者は人災によるものだ。
政府の対応の遅れによる人災だ。そこのところをきっちりと見据えていく必要がある。戦後最大級の非常事態にあって、政府の危機管理対応はとてもではないが、プロのやっていることとは思えない。
とりわけ、原発対応はひどすぎる。放射線の測定値が基準を上回ったとして次々に発表し、野菜や原乳、さらに水道水まで出荷停止、摂食停止、飲用回避ときた。
風評被害はいまや世界中に及んでいる。日本からの野菜などの輸入をストップするところが激増した。逆に日本国内では中国からの冷凍野菜の輸入が増えて、向こうの工場はフル稼働だという。
ついこの間まで、中国野菜はあぶないというのが通り相場だったのを忘れたのか。
このコラムでは何度も指摘するようで恐縮だが、これまで測定された放射線値で、ただちに健康被害を及ぼすレベルのものはひとつもないのである。
放射線レベルの高いものを飲食しないほうがいいのは当たり前だが、これだけ大騒ぎして、数日たてば、消えてしまうものもある。
要は、福島原発で冷却、封じ込めに成功すれば、あとは放射性物質の飛来などなくなる。
危機管理を国家として一元的にきちんと行っていれば、おそらくは、風評被害を生むようなデータは発表しなかったに違いない。口にしてもまったく影響のない水準だからだ。
プロの危機管理とはそういうことをいう。その代わり、一連の事態が収束したら、国家の最高責任者である菅首相は、その経過を明らかにし、すべての責任をとって辞任する。
これをやっていたら、風評被害も買占めも起きなかったに違いない。
だいたいが、これだけの先進国で、いくらマグニチュード9・0といっても、2週間たってもなお、避難所で多くの人々が暖房もなく、医療も受けられないなどというのはあり得ない。
政治の無策という以外にない。官邸が国家の危機管理センターになっていない。
ここは強権を発動して、東京以西の企業に全面協力させ、被災現地にガソリンなど必要物資を送るといった策が取れなかったのか。大量の医療チームを送り込むぐらいのことができないのか。その経費がいくらかかってもかまわない。
そういうことを可能にするのが政治というものの力である。
国家リーダーたるべき菅首相は憔悴しきった顔をテレビにさらしている。復興へのビジョンも描けないままだ。東京電力の社長は表に出てこない。IAEAの事務局長が来日したとき、応対したのは副社長だった。
政府や当事者への信頼感がないから、買占めが起き、風評被害が増幅する。生命をかけて原発の復旧に取り組む関係者には頭が下がるが、責任ある立場の人たちは何をしているのか。
菅首相はこの事態に取り組む気力も能力もないのなら、お引き取りいただく以外にない。
杜父魚文庫
7524 国家の危機管理がプロらしくない 花岡信昭

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