7568 震度五の地震対策で他愛のない話 古沢襄

菅内閣や東京電力のこと考えると腹が立つことばかりだから、たまには他愛のないこと書き綴る。と言っても3・11大災害でわが家もかなりの被害と怖い思いしたから、決して他愛のない話ではない。
一番怖かったのは書斎に積んであった本の山が大音響を立てて崩れ落ちたことだ、幸いなことにトイレに入っていたので、本の山崩れの直撃を受けたわけではない。しかし書斎に足を踏み入れて、それこそ足の踏み場もない惨状に怖気をふるった。
3日もあれば片付くと高をくくっていたが、二週間たってようやく散乱した本の山の整理ができた。多くの本は廊下に腰高の台を二つ置いて、背表紙がみえるように山と積んである。ひと山で三〇冊、四列が二つの台に並べたから二六〇冊ぐらいだろうか。天井近くまで積み上げれば、五〇〇冊はいけると皮算用。
廊下なら誰も被害を受けない。何よりも背表紙が一目瞭然なので、本棚にひと棚二列に並べるよりも便利だと自分の思いつきにうけに入っている。だがオヤジやオフクロの蔵書も処分しないでいたから、本の重みで二階が落ちる危険性がある。
一階の居間にはガラス戸がついた本棚が二つある。母の蔵書だった永井荷風全集はそのまま。父の蔵書だった真山青果全集、水戸学体系も鎮座している。一階だったので、二つの本棚は倒れなかった。
二階の書斎の隣の部屋も書庫代わりに使っている。こちらの方は文庫本を中心に二つ本棚に置いてあるが、入りきらないので、ご多分にもれず山と積んであった。これも見るも無惨、倒壊して部屋中に散らばっていた。
さて肝心の書斎なのだが、二つの本棚に納めてみたが、やはり二列にしないと収納できない。あとは机の後ろに背表紙をみえるようにして、積み上げるしかない。片付いたようで、全然、以前と変わらないと女房は嘆く。しかし私にしてみれば、背表紙がみえる並べ方は格段の相違があると自画自賛している。
もう一つ。天井の洒落た電気傘は外した。100ワットの裸電球が二つ。かなり明るくなった。電気傘を外したところに長い糸紐を垂らして先に小さな錘をつけた。少し揺れているな!と感じたら、錘の先をみることにした。なんとも他愛のない地震対策!
それよりも一足先に隣の寝室で大イビキをかいている愛犬バロンが、震度三でも飛んできて、書斎の机の下に隠れる。錘よりも察知が早いから、この方が地震対策になるのかもしれない。
震度五ともなれば、書斎が一番危ない。真っ直ぐ寝室に駆け込む腹でいる。寝室の家具はすべて片付けた。壁にはお気に入りの絵を額に納めて飾ってあったが、すでにお蔵入り。薄型のデジタル・テレビだけしか置いていない。ということだが、やはり他愛のないお話なのかもしれない。恐縮!
杜父魚文庫

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