東日本大震災や東電福島第一原発事故に対応するため、民主党と自民党が連立政権を組む”救国内閣”論が高まっている。読売新聞社が1~3日に実施した全国世論調査で64%が大連立を支持した。
菅首相については「今国会が終わる夏ごろまで」31%が最も多く、「早く退陣してほしい」も19%で、半数が今年夏ごろまでの退陣を求めている。しかし民主党の岡田幹事長は3日、記者団に対し、「大連立が必要なら、すべての政党の力を借りてやればいい。ただ、『菅総理大臣を代えろ』とか、『誰がいい』といった話になれば、政治そのものが見放されてしまう」と早期退陣を否定した。
有り体にいえば、民主党は復興に当たる担当大臣を新設するなど、閣僚を3人増やすための内閣法の改正を行い、菅首相の下で増員した閣僚分を野党にあてがう大連立で当面を固塗する腹だろう。
それでも自民党内には大連立話に乗り気な空気が広がっているという。未曾有の大災害を前にして与野党が争う余地はない。政治に空白を招く解散・総選挙も出来る筈がない。さりとて”武士は食わねど高楊枝”の野党暮らしも辛い。
政府・民主党は、野党側の意見も聞きながら、四月中に第一次補正予算案、そして、早ければ六月には第2次の補正予算案を編成して復興に向けた取り組みを本格化させようとしている。バスに乗り遅れないために自民党内に浮き足立つ空気が出ている。
<民主党が自民党との大連立へ再び動き出した。東日本大震災の復興に向けた第1次補正予算、復興構想会議、閣僚ポストの三つを誘い水に、政権入りを呼びかける。巨額を投じる大事業を目の前にして、自民党内でも大連立参加への機運が盛り上がってきた。
菅直人首相は震災後、自民党を巻き込んだ「危機管理内閣」をつくることを急いだ。福島第一原発の事故で自衛隊や東京消防庁が懸命の放水活動をしていた3月19日、自民党の谷垣禎一総裁に電話で入閣を要請した。ポストは副総理兼震災復興担当大臣。けれども「あまりに唐突な話」と断られた。
それでも首相はあきらめていなかった。震災被害が16兆~25兆円にのぼることが判明し、自民党内で復興事業に関与するため大連立への参加を求める声がベテラン議員を中心に高まってきたのを見計らって「再起動」した。
第1弾は「補正予算」だ。民主党の安住淳国対委員長は今月1日、自民党の逢沢一郎国対委員長に「補正予算を与党と自民、公明両党で一緒に作りたい」と、協議の場を作ることを提案した。がれき処理や仮設住宅建設など早急な対応が必要で野党も反対しにくい施策を中心に、4月中に2兆~3兆円規模の第1次補正予算案を作る方針だが、その編成段階から自民、公明両党を巻き込み、なし崩し的に政権に引き込んでしまおうという算段だ。
二つ目は、首相が震災1カ月の11日までに設置すると表明した「復興構想会議」。土地利用の専門家や被災地関係者だけでなく、野党幹部の意見も聞き、街づくりや農林漁業の再生策を練る構想だ。首相は「与野党を超えて協力して推し進める」と、野党の議論への参加に期待を込めた。
三つ目は「閣僚ポスト」だ。民主党の岡田克也幹事長は1日、自民党の石原伸晃幹事長に(1)新設の震災復興担当相(2)環境相から分離する防災担当相(3)官房長官から分離する沖縄・北方担当相、の「3増」を示し、そのために必要な内閣法改正への協力を求めた。自民党に対する事実上の入閣要請といえる。
補正予算、復興構想会議、閣僚ポスト。どれも大規模な道路、港湾、インフラ整備などの巨額の復興事業に計画段階から深く関わることができる魅力的な提案だ。民主党幹部は「運び方さえ間違わなければ大連立に進む」と自信を示す。
自民党の大島理森副総裁は2日、地元の青森県八戸市で「現場感覚は圧倒的に我が方が持っている。しっかりと話し合いをする」と述べ、協議に意欲を見せた。公明党内にも民主党と自民党の連立に取り残されるわけにはいかないとの声が強い。ただ今は統一地方選の真っ最中で与野党が激しく争っているため、連立協議は4月後半以降に本格化しそうだ。
一方、連立を組んできた国民新党には、民主、自民、公明3党の枠組みが進むことに警戒感が広がる。亀井静香代表は2日夕、首相と官邸で会談し、「ちまちました次元の低い数合わせではなく、挙国一致体制にすべきだ」と迫った。(朝日)>
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7593 バスに乗り遅れまいと浮き足立つ 古沢襄

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