7711 NATOのリビア空爆で慌てる中国 宮崎正弘

リビア空爆つづけるNATO機、カダフィ司令部を爆撃した。本気で慌てているのはリビア原油を大量に輸入している中国だ。
NATO空軍機はリビアの首都トリポリ郊外、カダフィの司令部を空爆した。英国は軍事顧問団をベンガジへ派遣した。反政府武装組織へのてこ入れである。リビア情勢はこれで新段階に入ったかも知れない。
アジアでリビア情勢にもっとも敏感な国は言うまでもなく中国である。イタリア、フランスは軍事的経済的関心度が高いが、かといってカダフィ独裁には反対しており、中国とその政治的立場は真っ逆さまに異なる。
中国は毎日平均で290万バーレルの原油を中東から輸入しているが、トップのサウジアラビアが110万バーレル。
北アフリカを含めて中東の戦雲が拡大すれば原油代金が上昇する。中国は、原油価格が10ドル高騰した場合、GDPは0・4%下がる(アルジャジーラ、4月20日付け)。
そればかりではない。中国はリビアに膨大な投資をしている。50件におよぶ大型プロジェクトがあり、内乱突入直後からはじまった中国人の脱出は36000人に及んだ。プロジェクト中断の被害額は依然算定されていない。
中国のプロジェクトがもっとも多いのはアンゴラである。ついでスーダン、ナイジェリア、四番目がリビアである。
こうした関係から中国はリビアでカダフィ態勢の崩壊を望んでいない。イェーメン、バーレン、サウジアラビアに関しても同じである。
リビアのカダフィの故郷でもあるサイタ地区の石油基地から中国はリビアから輸入する石油の70%を依存しているからである。 
  
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  読者の声 どくしゃのこえ ドクシャノコエ DOKUSHANOKOE
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(読者の声)待ちに待った先生の『中東民主化ドミノは中国に飛び火する』(双葉社新書)を買い求めました。僕は中国に駐在経験があり、そのときに働いていた若い中国人は多くが民主化を望んでいた。いま半分くらいまで読み進みましたが、じつにダイナミックな記述で、中東諸国に何がおこり、その衝撃波がチャイナに及ぶであろうと簡潔な表現に記されています。
そして最後の箇所に「歴史を動かすのは若者のモラルと熱気である」として、民主化が中国に実現するより軍事クーデターの可能性が高いとされるあたり、独特の宮崎史観とみました。夢中で読んでおります。(山猫ランド)
(宮崎正弘のコメント)早速にもご感想いただき、たぶん小誌読者の一番乗り。有り難う御座います。民主化が望み薄という結論の最後の比喩は正確には、「歴史を動かすのは、死ぬ気力で戦う若者のモラルと勇気」という暗喩です。
杜父魚文庫

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