日本は環太平洋経済連携協定(TPP)に参加すべきか否か。菅政権はすでに参加の基本方針を示唆しましたが、いまになって態度をやや不鮮明にしています。
その菅政権の態度を正面から批判し、日本のTPP早期参加こそ経済復興につながる、という主張が日本経済新聞の4月19日の社説で打ち出されました。
TPPについてはこのサイトでも意見が飛び交ってきました。その日本経済新聞の社説を紹介し、さらなる議論の糧とします。
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東日本大震災の影響で、日本にとって長期的に重要な経済政策への取り組みが先送りされている。その典型が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加問題だ。6月までに政府として判断を下す予定だったが、検討作業は止まったままだ。
日本は自由貿易の中で生きていく国である。その立場は、震災が起きても変わらない。むしろ経済復興のために、世界とのつながりを一段と深めねばならない局面だ。
震災、原発事故に伴う生産力低下と風評被害で、日本の輸出に急ブレーキがかかった。海外企業は日本への投資に及び腰になり、外国からの来訪者も激減した。このままでは、主要貿易国の仲間の輪から日本がはじき出されてしまうおそれがある。
日本国内の部品のサプライチェーン(供給体制)が崩壊した結果、世界の製造業が打撃を受けた。韓国企業は、これを商機ととらえ、日本の部品・素材メーカーに代わって米欧や中国などへの供給を増やそうと動き始めた。日本企業から人材の引き抜きを始めた韓国企業もある。
その韓国は、すでに米国や欧州連合(EU)と自由貿易協定(FTA)交渉を終えている。米欧との協定のない日本より、関税などの面で有利な立場だ。世界の企業が部品の調達先の見直しを進める中で、日本の地位が奪われかねない。
財政難の下で震災後の復興に必要な資金を稼ぐためにも、日本の輸出を先細りにしてはならない。日米FTAと同じ効果があるTPPへの参加を、これまで以上に急ぐべきだ。日米の経済連携をテコにすれば、EUとの交渉も進めやすくなる。
被害が深刻な東北を含めて、国内農業への影響を心配する声は強い。農家への手厚い支援策が要る。だがTPPに参加しても、直ちに全品目の市場を開放するわけではない。交渉で10年間などの長い期間を定め、段階的に関税を下げればよい。
ワシントンで開いた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で、各国は日本の復興への協力で声をそろえた。貿易交渉で、日本の国内経済への影響に各国の理解を得やすくなる面もあるだろう。
大津波に襲われた地域の農業を再建するうえで、農地の集約など生産性を高める仕組みが欠かせない。政策次第で、自由化に耐えられる強い農業を東北に築くことができる。菅政権が設立した復興構想会議は、そのための道筋を議論してほしい。
傷ついた日本経済の成長を支える柱は貿易である。菅政権は今こそTPP交渉への熱意を示すべきだ。
杜父魚文庫
7720 「TPP参加を急げ」 古森義久

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