二〇〇八年、三年前に”地底咆哮”陸羽大地震の記録”を書いた。明治29年8月31日のことである。岩手県の真昼山地を震源とする大地震が発生した。真昼山地の地下4キロメートルを震源とするこの地震によって、岩手県側に川舟断層、秋田県側に千屋断層の二大断層が出現した。
この陸羽大地震で秋田県側の死傷者二百五人、重軽傷者七百三十六人、家屋の全壊消失四千三百件。岩手県側の家屋の全壊が三百十件。震源地に近い西和賀地方が秋田県側に比較して被害が軽微だった特徴を持つ地震であった。
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岩手の菩提寺を詣でて戻ってきたのだが「ことしは東北に大地震がくる」と予感めいたものがあって、この記事を書いた。その予感は当たらなかったので、いつしか、この記事を書いたことも忘れてしまった。
人間の予知能力ほど当てにならないものはない。やはり文明の恩恵を受けて、過去にあった危険予知の本能を忘れてしまったのだろう。本能ではなくて、過去の記録を読んだ時に漠然とした危険を感じる。これは予知ではなくて、書物が教えてくれる知識。
早い話がテレビで放映してくれる地震予知の速報は四割程度しか当たらない。最新の地震予知の科学の粋を集めても人間が出来ることは限られている。
不思議なのは犬は地震がくるのをいち早く察知する。予知ではないが、テレビの地震予知速報よりも二、三分も早い。愛犬バロンは隣の寝室で寝ていたのが、突然、走ってきて私の座っている椅子の下に隠れる。それでテレビのスイッチを入れるとチャイム音とともに地震予知速報が流れる。
犬の聴覚は人間よりも優れているというから、私たちが感知できない地震波を察知できるのだろう。地震の大きさも感得できる能力を持っている。震度三とか四程度なら椅子の下に隠れる程度だが、震度五以上となると椅子に座っている私のところに飛びついてくる。地震の大きさを感知できるのは、立派な予知能力だと妙な感心をする今日この頃。
バロンは三代目のコーギー犬。祖父犬が静岡でチャンピオン犬だったという血統書付きだっただけに、運動神経だけは並の犬よりは優れている。だが甘やかして育てたので、臆病でそのくせ威張る。どこかの総理大臣と性格が似ている。
前のコーギー犬は親子だったが、母犬のチロは滅法、気が強くて賢かった。息子のバロン(一世)は甘たれ子。この二匹がいる時は畳の部屋で寝たのだが、私の両側で寝てくれた。何か、犬に守られて寝る気がしたものである。
この二匹にも地震の予感能力が備わっていた。深夜、地震がくると二匹がガバッと起き上がり、オオカミのような遠吠えをした。私が寝ていると地震がおさまった後でも遠吠えをやめないのだから、起きるしかない。お陰で寝不足になる。
今のバロンは遠吠えをしない。懸命に走ってきて椅子の下に隠れるだけ。「お前は体育会系だな」とからかっても、ビクビクした様子でしばらくは落ち着きがない。総理大臣もいろいろ、犬もいろいろ、ということだろうか。
杜父魚文庫
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