やっぱりそうか、という世論調査結果は凄まじい限りです。富裕層の過半は中国と「おさらば」したがっている実態が浮き彫りに。
「ベイン&Co」社が中国の富裕層2600人に聞き取り調査をおこなった。その結果がウォールストリートジャーナル(4月20日)で報じられた。案の定、というか、思っていた通り。
「やっぱりそうだったか」。つまり中国の富裕層の過半は中国とおさらばしたがっている実態が浮き彫りになった。
米国、カナダ、豪州では或る金額を超える投資をすると移民、永住のヴィザが発給される。米国では50万ドル以上の投資をおこなえば比較的容易に米国へ移住できる。
十年前に中国人で50万ドルの財閥は指で数えるほどしかいなかった。現在、おそらく58万5000人が50万ドル以上の資産をもつと推計されている。
すでに10%が投資移民として海外移住を決意しており、さらに10%が近く申請すると世論調査に回答した。移民組は、いまでは沿岸部とは限らず華南から中西部にひろがっている。
現実の投資移民実績は米国へ2010年は1971人(09年は1360人だった)。カナダは一年で倍増した。バンクーバーをホンクーバーというように。
海外移住を望まない富裕層でも、44%が資産の海外分散投資を実践しており、不動産、骨董品にも巨額をなげうっている実態が判明した。
ギャロップの世論調査では中国人の12%が「繁栄している」と生活の満足を示し、71%は生活と戦っていると回答し、17%が生活に喘いでいるとした。
ウォールストリートジャーナル(4月21日)に拠れば、おなじ調査結果、米国の場合。「生活に満足」は59%、戦っている38%だった。
▼どこまで続く奢侈高騰、豪華暴騰
カネにあかせてとんでもないことをやらかすのも中国人である。紀伊国屋文左衛門は、豪遊したとはいえ、文化に力を注いだ。いろんなプロジェクトのスポンサーもやった。戦前の財閥は、戦闘機を一機寄付したりした。日本から逃げだそうという財閥はいなかった。
中国人の行動形態は逆である。骨董品買いに明け暮れる連中は、日本にも団体でやってきてオークションに参加し中国の掛け軸、壺、陶磁器、水墨画などを購入しているが、香港で開かれるサザビース骨董オークションでは、仏葡萄酒「ラフィット・ロートシルト」を天文学的価格をつけて競り落とした匿名財閥がいた(一本1890万円で三本まとめて!)。
これは電話でオークションに参加したのだが、後日、バイヤーが「シノペック」であることが判明した。シノペックは北朝鮮の将軍様のようにフランス高級酒を集めるのが好きだったようだ。中国マスコミは一斉に非難した。
またヘラルドトリビューン(4月22日)に拠れば、富裕層のあまりの贅沢、奢侈に国民の怒りが集中するようになり、たとえば墓場を豪華にすることに制約が設けられたと報道している。
近年、中国の墓地規則では墓の敷地上限は1・5メートル四方、墓の高さは一メートル以内となっているが、守られている気配はなく、けばけばしい墓地、派手な装飾、背の高い墓などが目立ち始めている。
あまりに豪華葬礼には罰金刑が科せられるが、最高でも450ドル程度で、財閥達は罰金を支払って豪華な墓地をつくる。
嘗て(五、六年前まで)日本は墓石を台湾、中国(とくに福建省あたり)から輸入してきたが、最近値上がりし、中国以外の大理石、御影石を輸入するようになった。
杜父魚文庫
7725 海外志向の中国富裕層 宮崎正弘

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