7842 日米同盟は大震災でかえって弱くなる?  古森義久

東日本大震災で示されたアメリカの支援、とくに米軍の支援活動によって日米同盟が強化された、というのが一般の見方です。
しかしアメリカ側には、「いや、そうではない。日米同盟は短期には強化されたようにみえても、中期、長期にはかえって後退する見通しが強いのだ」という見方もあります。日本の防衛予算が震災復興への支出増大で、どうしても減っていくから、だというのです。
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■震災シフト懸念、日米同盟後退も シンクタンク報告
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【ワシントン=古森義久】ワシントンの有力シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)は、東日本大震災が日米同盟に及ぼす影響を予測した 報告をこのほど公表した。同報告は、日米同盟が当面は米軍の日本の災害救済支援により強化された形となるが、中期、長期には日本側の震災シフトの結果、深刻な後退も懸念されるとの見方を明らかにした。
民主党寄りでオバマ政権にも近いCNASは「日本の天災」と題する報告で、日本の防衛について、昨年の防衛計画大綱などで日本が尖閣諸島など南西諸島の 防衛やミサイル防衛の強化の方針を打ち出したことを歓迎。しかし一方で、この優先策が「自衛隊の出動を含む大震災のような自然災害救済の方向へ重点を移す 可能性がある」と述べ、日米共同防衛がかえって弱くなる展望を示唆した。
同報告はとくに日本が震災前でも、毎年、防衛費を実質削減してきたことを指摘し、復興で最低限1千億ドルが必要とされる救済費支出により、防衛費がさらに削減されて「防衛計画大綱が規定する目標を達成できない見通しが強くなる」という予測を打ち出した。その場合には日米同盟が弱体化されるという。
その一方、同報告は大震災の救済が日米同盟の効用をも立証したことを強調した。とくに沖縄駐留米軍部隊が直接に東北の救済活動に関与したことが、「日本の危機に際しては、グアムなどの遠隔地よりも沖縄や日本本土に駐留する米軍がより多くの効用を発揮することを明示し、沖縄住民の米軍への態度を軟化させたようだ」と結んでいる。
杜父魚文庫

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