やっぱりそうか、そうだろうと思いました。パキスタン、米国の主権侵害に強い抗議、タリバン掃討作戦継続に障碍。
オサマ・ビン・ラディンのパキスタン国内アブボタバードの隠れ家襲撃事件を、筆者は中国に旅行中に知ったので、5月3日時点での情報は中国語新聞と中国が出している英字新聞のみだった。
したがって欧米メディアや専門家の分析を知りたくとも、中国国内からはアクセスが不能だった。ニュースを初めて聞いたときは黒竜江省のジャムス(佳木斯)という町のレストランだった。偽情報かと思ったほどだ。
米軍の急襲作戦にはパキスタン軍が協力した、と聞いたが、あとで米軍単独行動とわかった。となるとこれは、基本的にパキスタンの主権を侵害していることを意味する。
米軍の隠密ヘリコプターはアフガニスタンの基地を密かに出発した。ステルス・ヘリだが、パキスタン空軍は正体不明の飛行物体を確認し、スクランブル発進をかけたという(ウォールストリートジャーナル、5月7日)。
だが、見失った。米軍ヘリは二機、ビンラディンの豪邸を急襲するが、一機が炎上したため、ビンラディンの死体と米軍乗員もろとも、証拠物件のコンピュータやビデオも押収し、一機で洋上の空母へ帰還した、と発表された。
米軍のミューラー統幕議長は作戦終了と当時にパキスタン陸軍ペルベス・カヤニ陸軍大将に電話でつたえた。遺体はすぐにDNA鑑定がおこなわれ、水葬されたと米国が発表した。アルカィーダは、7日になって指導者の死を認めた。
さて、米軍の軍事作戦に対して、パキスタンの怒りがどの程度のものかというと、国家主権の基本を侵害されたことへの怒りである。
「米軍の単独軍事行動は受け入れられない」(パキスタン陸軍ペルベス・カヤニ陸軍大将)。しかし「パキスタン側が米軍の動きを事前に察知できなかったことを反省している」と奇妙なコメントを付け加えている。
外務大臣サルマン・バシールは「もし米軍が次もパキスタンにだまって軍事行動をとれば、われわれは作戦を妨害するだろうし、米軍への情報協力はあり得ない。それが今後の米欧のタリバン征討軍事行動に障碍となろうとも、われわれの責任ではない」とウォールストリートジャーナルのインタビューに答えた(同7日付け)。
「これは主権を侵害されたのであり、パキスタンが小馬鹿にされたのであり、恐るべき結果である」とするパキスタンは、米軍が次に要求しているタリバンの宗教的指導者オマル師の引き渡しは「難しいし、そもそもパキスタンはオマル師の隠れ家を知らない」と冷淡な姿勢を崩さなかった。
▲パキスタンには政府の統治の及ばない無法地帯があちこちに点在している
余談だが、ビンラディンが隠れていた豪邸は三年前からマークされていたといわれている。これも甚だしく疑問である。
東京のパキスタン大使館をみたことがありますか?高度のアンテナ、情報発信基地としてすごい施設があるように、イスラマバードの外交街はパラボラアンテナが林立し、BMW、ベンツ、ビックがならぶ豪華ガレージ。プールつき。こうした政商的財閥が贅沢にくらす一角がある。
もっと皮肉なのはカイバル峠である。パキスタンのペシャワールからカブールへ至る坂道、くねくねとひん曲がり、これを別名「密輸街道」という。
おどろくべし。カイバル峠へ至るパキスタン側の山道の両脇には豪邸、豪邸、豪邸。プール付き。車庫にはベンツ、BMW。豊田のランドクルーザ。屋上には見張りがいる。機関銃で武装している。この世界に悪名がとどろく麻薬密輸ルートにパキスタン政府は手を出せないのだ。
こういうアンタチャブル地帯がパキスタン国内のあちこちにあって、アフガニスタン政府が全土を統治していないように、パキスタン政務の統治の及ばない無法地帯があちこちにある。
この実情を勘案すれば、ビンラディンの隠れ家を確信し、最終攻撃命令を出すまでには相当の時間がかかっただろうし、パキスタン情報部の一部の協力があっただろうと推察できるのである。
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(読者の声)6日夕方7時から菅首相の唐突な浜岡原発全面停止の要請の決定という記者会見がありました。中部電力は首相命令ということであればいたしかたありませんが、法的根拠のない首相からのお願い(要請)であれば中部電力独自の判断で丁重にお断りしたら如何でしょう。
浜岡原発全面停止が本当に必要と考えれば、原子力安全保安院経由で行政命令を出せるはずです。それをしないでお願いとは、毎度の如く首相お得意の責任回避の手法と思われます。首相からは今後のエネルギービジョンもなく「ものづくり日本」の中核地域を壊すように思えます。
企業活動縮小やそれに伴う雇用対策や日本企業の海外逃避への対策の発信もありません。浜岡原発全面停止による経済的損失は、中部電力が自ら受けねばなりませんし、電力不足による企業経営者や国民の苦労も中部電力の責任となります。
菅首相のお願いを受諾して直ちに浜岡原発を停止したとしてもほとんど安全性は変わりません。停止することで燃料棒の冷却が必要になり、その電力は浜岡原発の外部からの供給が必要です。
ここで、菅首相が言うような地震と津波が来たら冷却用電源は失われ福島原発と同じ事になります。つまり、停止するのが喫急の課題ではなく、いかに津波堤防など安全対策を急いで行うかが問題であると思います。
このように、真の問題には眼を向けず、自らのリスクは回避して、現況の国民の「空気」を察して反原発支持派の人々からの支持率向上を画策しているだけとの卑怯さと保身が垣間見られます。この国民の「空気」の動向が読めないのか野党もマスコミも様子見で手をこまねいているように見えます。
力量のない人物ほど大衆の人気取りに傾斜し首相の座にしがみつくために何をしでかすか恐ろしい。統治能力のない空きカンを首相に抱くのは原発事故より危険では。(KU生、世田谷)
(宮崎正弘のコメント)無自覚的鈍感行為の連続ならまだしも、もし、菅直人首相が、これら一連の動き(初動妨害目的のような福島原発視察、過剰な避難指示、放射能過激予防措置、農作物、漁獲妨害、レベル7,そして浜岡原発妨害)を意図してやっているとすれば、彼のねらいは『革命』です。
いみじくも『テーミス』五月号トップ記事は「原発危機に乗じて(日本)解体→革命をねらう」とあります。中部電力は菅首相の要請を優雅に無視するのが一番です。
杜父魚文庫
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