7910 西岡参院議長怒りの記者会見「菅首相は全部ダメ」  阿比留瑠比

「敵に回すと怖い」という人物がいますが、西岡武夫参院議長はその典型例ではないでしょうか。産経新聞のインタビュー、読売新聞への投稿と連日、菅直人首相に即時辞任を迫り、昨日の記者会見でも菅政権のこれまでを「全否定」してみせました。
三権の長にここまでいわれて平気で居座る菅首相もたいしたものですが、西岡氏の舌鋒も確信と鋭さに満ちています。昨日の記者会見でのやりとりを、原川貴郎記者がテープ起こししてくれているので、ここで紹介します。あれこれ付け加える必要がないほど面白い。深い共感を覚えます。
記者:参議院の長が総理の進退に言及するのは極めて異例だが、(読売への)寄稿の真意は
西岡氏:まあ、あそこに書いてある通りですね。
記者:この寄稿は参院議長西岡武夫として?
西岡氏:そうです
記者:政治家西岡武夫ではなくて参院議長?
西岡氏:よく、事柄は違いますけども、総理大臣がたとえば、靖国神社に参拝するときに、総理大臣ではなくという分け方をされた方もおられましたよね。私は、そういう分け方っておかしいと思ってますから。私が発言するときはいつも参院議長という自覚の下でやっております。
記者:そうすると参院としてのメッセージと受け止められる
西岡氏:いや、それは別に院議をもってではありませんから。参院議長としての見解でございますから。
記者:いろいろ書かれた中で端的に言えば、菅総理の何がダメなのか
西岡氏:全部ですね。だって今日の衆議院のあれ(本会議の質疑)、ご覧になっててもおわかりでしょ。答弁しないじゃないですか。復興構想会議の答えを待ってから、何のために内閣があるんですか。おかしいでしょ。
記者:以前から菅さんの問題点を指摘されているが
西岡氏:あそこ(読売)に書いてあるように尖閣諸島について(中国漁船衝突事件)ですねえ、政治が逃げたと。検察に押しつけて逃げたと。これはもう、極めつけでしたね、初めっから。
記者:今までも菅政権を批判してきたが、なぜこのタイミングで寄稿したのか
西岡氏:実はサミットがありますね。そういうこととか、G8とか、G7とかという国際的な会議に(首相が)お出になるにあたって、やっぱり、我が国が、特に原発の問題、事故を起こしたと。そのあとに開かれる国際会議、かなり重たい国際会議ですから。その前に、きちんとした日本の状況とこれからの方針を語れる総理大臣に行ってもらいたいと。そういう気持ちでございます。だからこの時期だったんです。
記者:この寄稿は直接菅さんや官邸に届けているのか
西岡氏:はい。届けております。昨日の18:30。
記者:何らかの返答は?
西岡氏:まったくありません。
記者:菅さんが今日国会でも、退陣する考えはないと改めて表明しているが、これに対してどう思うか
西岡氏:まあそれは菅さんはなかなか、いま政権の座にしがみついて権力を手放さないと。そういうご性格だろうと思すね。
記者:この後、議長として議長の主張を通すために、どういった行動をしていく考えか
西岡氏:そうですねえ。まあ、私として今、この段階でできることは、ほぼやったわけですね。これ以上はなかなか私の手は及ばない。特に総理大臣に対するだめだということについてはもちろん、参議院でも問責というような話もちらほら出ておりますけれども、一義的には他の国務大臣とは違いますから、内閣首班ですから。衆議院でどうされるのか、私がマスコミを通じて私の考え方を述べたことによって、いささかでも、心ある同僚議員の皆さん方がこれではいけないという行動を起こされるというきっかけになればと思っております。
記者:同僚議員というのは与野党問わず?
西岡氏:そうですね
記者:総理退陣には内閣不信任案しかないが、内閣不信任案についていつごろどういった結果が、どういった段階で出るべきだと思われるか
西岡氏:これは衆院のことですから、私も参院議長という立場でございますから、そこはこれ以上は踏み込んで申し上げるのは衆院に対して問題があると思いますから、これ以上は言及をいたしません。
記者:北沢俊美防衛大臣が今日の衆院安全保障委員会で、(西岡氏は)一方的に話していると批判したが、感想や反論はあるか?
西岡氏:まあ、それは外務大臣もなんかおっしゃったというふうに聞いておりますけども、それはそれぞれの閣僚としておっしゃったのかという分類はできませんから。政治家の皆さん方がそれぞれの立場でお考えになっていることであって、私からいろいろと申し上げることではありませんが、防衛大臣がおっしゃるのは、寄稿文の中にも書いておりますように、国家安全保障会議を開かないで、10万という自衛隊のだいたい4割ぐらいの隊員をどういう理由であれ動かすということについて特に今回の東日本大震災、これは自衛隊の大変なご努力をいただいているわけですけども、これについてはやっぱり会議を開くべきだあったと。その当事者の大臣からそういうお話をいただくのは、私としては意外ですね。会議を求めるべき立場だったんじゃないでしょうかね、総理に対して。
記者:議長が菅総理に不満を募らせたのは、諫早湾干拓事業のときに上告しなかったことからかと思ったが、参院の議長としてそういうことをあえて口にされるのは?
西岡氏:諫早干拓なんて、そういうなんといいましょうか、これも国策ですから、それがどうだってことじゃないんですけど、今度の私のことはいささかの関係もないですから、それは混同してもらっては困ります。
記者:今後参院で首相問責決議案が可決された場合、議長が本会議のベルを押さないということは考えられるのか
西岡氏:は?
記者:本会議を開かないという選択肢も考えられるか
西岡氏:それはその、まだ通ってないんですよ。通ってないですからね。出てもいないですから。
記者:出たら考えると?
西岡氏:それは、こういう問題というのは、この間の子ども手当の問題のときも、事務総長と二人本会議場でまったくわからなかったわけですね、可否同数になると。そこで決めるわけですからね。それを今から想定するということは、どうでしょうか。
記者:憲法上は総理に解散権という防御措置があるが、参院にはそれがない。この憲法上の問題はどう考えるか
西岡氏:これは私が、国会議員として、また参院議長という立場で、現状を見るに見かねて書いたわけでございますから、もちろん、私が全責任がございます。これについて同僚の議員の皆さん方が、党派、どの党派ということではなくて、西岡の発言はけしからんということであれば具体的なことになるでしょうから。
記者:具体的にというのは、議長不信任案が出るとか
西岡氏:まあ、そういうこともあるのでしょうかね。もしも、私が言っていることが間違っているなら。しかし、私は間違ってないと思いますね。私は。ま、だからこそ書いたんですけど。まあ書いてないこともたくさんありますから。それは、なんでもかんでも全部、洗いざらいすればいいっていうもんじゃありませんから、私もある程度、筆を抑えてといいますか、この頃はパソコンで私も書いてますから、キーボードを押すのを抑えて。書いてないこともありますから。もっと皆さん方が聞かれたら、えーって思われるようなこともあるんですよ。だけど、それはこの場では申し上げません。
記者:改めて総理に不満が募られた発端は
西岡氏:不満じゃないですよ。冗談じゃないですよ。怒りですよ。
記者:その発端は?
西岡氏:尖閣以来ですね。ずっと。今度の東日本大震災については初めっから私、怒っているんですよ。3月13日に定例の記者会見があったんですよね。そこで私は福島の、東電福島の原発が、言葉はそういう言葉を使わなかったが、メルトダウン起こしているんじゃないかという趣旨のことを13日に述べているんです。で、皆さん方には書いていただけなかったけれども、結局、そうだったわけでしょ。何日か前にわかったわけですね。そういうこともぜひ思い起こしていただきたい。
記者:議長の発言に対して、民主党の一部議員から越権行為だという指摘も出ているが、そういう指摘に対してはどのように
西岡氏:私に直接にだれも言ってきませんよ。それはやっぱり何といいますか、直接おっしゃらなければ。
記者:菅政権が発足してからまもなく1年になるが、菅内閣を評価するとどうですか
西岡氏:…ないですねえ。(評価する点)残念ながら。

記者:批判でも結構です。批評。
西岡氏:批評はもうずっとしてまいりましたから。結局、さっきもどなたかと話していたんですけどね、菅さんの年代ですから、デジタル時代の世代ではないんだけれども、菅さんの思考というのは何かこう、デジタル的にポンポンポンとものごとに反応されて、アナログというといかにも古いように思われるけれども、連続性がわからないんですね。針の連続性が。私なんか、最近はあんまり街頭演説はしないけれども、演説してて、針の動き方で自分がどれぐらいしゃべっているかわかるんですね。デジタルだと、ポンと飛ぶわけだから、時間の調整が効かないところがあって、アナログが使っているわけですね。ところが菅さんは、私その話してたら、その方はこんなん言われましたね。テレビゲームみたいに、ポーンと出てきたのをポーンとうつとかね、そういうタイプじゃないか。それはやっぱりちょっと総理大臣としてどうだろうかなという思いですね。敢えていえば。
記者:そこまで酷評される総理大臣に「辞めろ」と言わない民主党議員は菅さんと同レベルか
西岡氏:いや、そうは思いません。やっぱり民主党の議員で。自分の党が政権をとって、そこから少なくとも代表として選んで、その方が内閣総理大臣になっているわけです。それはなかなか言えないでしょうね。言いたくても。だけどもう、日本はですねえ、やっぱり昭和20年の8月15日、今回の平成23年の3月11日、大きな区切りなんですね。私はそう思うんですね。ここでこれからの政治をどう、日本の政治をどう展望するかということを総理が、もう2カ月過ぎているんですから、語らなければいけない。と私は思っているんですね。審議会とか構想会議はいいんですよ。総理の考えを示してくれればいいんですよ、それが私の考えと違っていても、仮に。
記者:国際会議で、これから方針を示す総理に言ってもらいたいということだが、どなたか念頭になるのか
西岡氏:いいえ、それはまったくありません。
こうした一連の西岡氏の発言について、民主党参院のドン、輿石東参院議員会長は昨日の記者会見で、こう述べました。
「もうこれは黙ってはいられない、やむにやまれない、そういう思いで、自分の意見を主張されたということでいいじゃないですか。それが間違っているとか間違ってないとか、そういうことは、言えないと思いますよ。一政治家として長いキャリアのある議長ご自身が、今の状態をそれだけ深刻に心配をされているということでしょう」

そして、参院幹部はこんな自虐的な句を披露しました。
「もうダメだ 党内みんな メルトダウン」
だから、早く菅首相を降ろさないと、民主党も日本もみんな溶けていくとずっと言ってきたわけですが…。民主党出身の西岡氏にここまで言わせておいて、自民党はじめ野党がきちんと行動できないとすれば、それはもう日本の政治はおしまい、ということかもしれません。
杜父魚文庫

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