拉致問題について私が書いた最新の記事です。「家族会」の增本照明事務局長の述べた言葉が印象に残りました。
拉致された日本人たちは北朝鮮という瓦礫の下に閉じ込められているのに等しい、というのです。東日本大震災で数多くの日本人が瓦礫の下から救われたのであれば、北朝鮮の瓦礫の下にいる同胞もなんとか救いたい、というのです。
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■【緯度経度】ワシントン・古森義久 北の瓦礫から助けたい
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北朝鮮による日本人拉致事件は日本国内では真剣な論議の的となることがやや少なくなったようだ。東日本大震災の惨禍をみれば、やむをえない現象かもしれないが、ちょうどそんな時期に米国でこの拉致への糾弾が国際的な連帯を広げ始めたことは心強い。
契機は本紙でも報じたように米国の民間人権擁護組織「北朝鮮人権委員会」が北朝鮮当局の外国人拉致の具体例を集大成した調査報告書を12日に公表したこ とだった。同報告書は、これまで日本が主体となり米国や国際機関に解決への協力を訴えてきた構図を他の13カ国の拉致被害家族や政府を加え、新たな国際有 志連合結成へと変えた。
同人権委員会のチャック・ダウンズ事務局長が語る。「北朝鮮当局による外国人拉致の実態の報告はこれまで大部分が日本と韓国の内部にとどめられていたの ですが、それが一気に英語で全世界向けに発信されました。その結果、米国も関心を改めて強め、韓国政府も従来と異なる積極性を解決に向け示しました」
今回の報告発表の会見には韓国やオランダ、ルーマニア、タイなどの政府代表が出席した。みな自国民を北朝鮮に拉致された国家である。米国駐在のフランスの大使もダウンズ氏に報告書の提供を求めてきたという。
実際にこの会見は圧巻だった。これまでの日本人拉致に関する記者会見とは異なり、演壇には同人権委員会のリチャード・アレン議長はじめ韓国の拉致被害者 家族の代表2人、米国務省のロバート・キング北朝鮮人権問題特使らが並んだ。一般席には報道陣だけでなく各国外交官ら多彩な男女が顔をそろえた。
だが演壇の中心はあくまで日本の拉致被害者「家族会」の増元照明事務局長だった。増元氏は英語でまず姉のるみ子さんが拉致された悲劇を語ったうえで、被害者救出には国際的な連帯が不可欠だと、訴えた。
この動きに応じるように米国下院外交委員会はさっそく6月2日に北朝鮮による拉致事件を中心に人権問題に関する公聴会を開くことを決めた。議会としては 米国永住権を持つ韓国系の金東植牧師が2000年に中国領内で北朝鮮に拉致された事件をなお追及する構えだともいう。オバマ政権では近く北朝鮮に食糧援助 を与える動きもあるが、少なくとも議会は北朝鮮の拉致を国際課題として糾弾する姿勢を固めているわけだ。
日本側の「救う会」の島田洋一副会長によれば、米側のこうした新たな動向に対応して平沼赳夫氏らを代表とする超党派の議員団が7月にワシントンを訪問する見通しもあるという。
合計14カ国の拉致被害者を列記したこの報告書は日本人については合計27人の名を明記し、そのうちの横田めぐみさんら計13人について「北朝鮮でなお生存している可能性がある」と述べていた。
増元氏は「大震災では瓦礫(がれき)の下の多数の人たちが救われたのだから北朝鮮という瓦礫の下で生きている同胞をぜひ助けたいです」と語っていた。
杜父魚文庫
7912 北朝鮮の瓦礫から日本人を救おう! 古森義久

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