アメリカにくる日本人留学生がここ数年、ものすごく減ったことは、すでにあちこちで報じられています。なぜ激減なのか。もちろん理由はいろいろあります。
しかしその理由のうち、本来ならごく当然の大きな要因をつい考えないでいたら、最近、はっと、それを想起させられました。日米の教育や文化の交流に関する会議での慶應義塾の安西前塾長の言葉でした。
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■【外信コラム】ポトマック通信 邦人留学生激減の理由
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日米文化教育交流会議の50周年記念の討論会が最近、ワシントンで開かれた。日米間の文化や教育の交流を進めることを目的とするこの組織は民間の学識者 や政府代表など両国12人ずつで構成される。委員長は日本側が槙原稔三菱商事特別顧問、米側はティエリー・ポルテJCフラワーズ社共同経営者である。
今回の集いはワシントンのライシャワー・センターが共催の形で加わり、「変化する世界での教育と文化のきずな」と題された。
さて日米両国の教育のきずなでまず想起されるのは米国での日本人留学生の激減である。大学以上の日本人留学生は1990年代後半5万人近かったのがいまは2万人台、各国からの留学生のなかでも人数で首位だったのが、いまは6位前後へと落ちた。一体、なぜか。
シンポジウムではいろいろな識者が多様に語ったが、前慶応義塾長の安西祐一郎氏の説明ではっと、目を開かされた。安西氏は洗練された英語でわかりやすく、日本の大学生が「経済の高成長を一切、経験せず、ソ連邦の存在もまったく見聞していない」ことを指摘したのだ。
自国の経済は縮小や衰退しか知らず、東西冷戦下のソ連の脅威を抑えた米国の役割も知らない日本の若者が米国留学に熱を燃やさないのはごく自然、と思えたのだった。
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7918 日本人留学生はなぜ激減したか 古森義久

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