中学生向けの平成24年度使用開始教科書「新しい日本の歴史」に目を通す機会を得ました。執筆と監修は「歴史教科書編集会議」です。座長は東京大学名誉教授の伊藤隆氏、その他、八木秀次、渡辺利夫、岡崎久彦各氏らが名を連ねています。育鵬社版です。
表紙には主題とともに、「こんな教科書で学びたい」と明記されています。これまでいわゆる歴史教科書問題でよく論議の的となってきた日本と中国の戦争の部分についての記述をまず読んでみました。
まず「日中戦争」という部分にはタイトルの下に(支那事変)と記されています。これも日本の公式の呼称で長年、そう呼ばれてきたのですから、そのまま歴史上の名称を紹介することも自然に思えます。
そしてその章に「満州国の発展」「二・二六事件」「日中戦争」などという項目があります。その「日中戦争」という項には以下の記述がありました。
「日本は義和団事件のあと、条約により北京周辺に5000人の軍を駐屯させていました。1937(昭和12)年7月、北京郊外の盧溝橋付近で日本軍は何者からに銃撃を加えられ、中国側との撃ち合いとなりました(盧溝橋事件)。これに対して日本政府は不拡大方針をとる一方で、兵力の増強を決定しました。その後も日本軍と国民政府軍との戦闘は終わらず、8月には日本軍将校殺害をきっかけに上海にも戦闘が拡大しました。ここにいたって日本政府は不拡大方針を撤回し、日本と中国は全面戦争に突入していきました(日中戦争)。日本軍は12月に首都・南京を占領しましたが、蒋介石は奥地の重慶に首都を移し、徹底抗戦を続けたため、長期戦に突入しました。
その間、何度か和平交渉が行われましたが、日本軍も、米ソなどの援助を得ていた蒋介石も、強硬な姿勢を崩さず、和平にはいたりませんでした。中国戦線の長期化により、わが国の国力は次第に低下していきました」
以上ですが、上記の「南京を占領」という部分に注釈のマークがあり、その注釈として以下の記述が本文の脇にあります。
「このとき、日本軍によって、中国の軍民に多数の死傷者が出た(南京事件)。この事件の犠牲者数なその実態については、さまざまな見解があり、今日でも論争が続いている」
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さて私は全体として適切な歴史の記述だと思います。
歴史の教えではどんな記述でも異論が出ることは当然ですが、これまでの教科書の主流の「南京大虐殺」「30万人を殺す」式のいきなりの断定がないだけでも、歓迎すべき前進でしょう。
杜父魚文庫
7932 新教科書は「日中戦争」をどう教えるか 古森義久

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